SEED&Destiny 1
□平行線の交叉
1ページ/5ページ
小さな燭台の灯りが1つだけ灯る、薄暗い部屋で、キラは後ろから柔らかく抱き締められた。
キラよりもしっかりとした大人の腕と身体。
彼が本気で掴まえる気になれば、キラの力ではとても抵抗しきれないだろう。
けれど彼は──いつもキラに甘く優しい。
囲われる事を嫌うキラのために、いつもほんの少しだけ逃げ道を残してくれる。
この時も、キラはその腕からスルリと抜け出して、月明かりの射す窓辺へ逃れた。
「相変わらず、つれない人だ」
そんな科白を、余裕を滲ませた声で呟き、彼が追ってくるのをキラは待った。
「私の心には、君しかいないというのに」
.