SEED&Destiny 1

□暗い空の彼方
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その人は、静かな展望デッキに一人で、暗い空を見上げていた。

右手を防弾ガラスに添えて細い肢体を支えて、微動だにしない。

シンは声を掛けるか、このまま立ち去るか迷ったが、声を掛ける方を選んだ。


「──何か、見えるんですか?」

シンに全く気付いていなかったのだろう。
振り向いたその表情は、ひどく無防備で頼りなく見えて、シンは思わず目を見張った。

少し毛袖の長い、茶褐色の柔らかい髪に縁どられた端正な顔は、いつもとは違い、どこか少女めいて見えた。
常に潤んでいるかのような紫色の目が、今は大きく見開かれているせいかもしれない。

「…シン」

声の主がシンだとわかると、彼は見開いていた目を細めて穏やかに微笑んだ。
そうするだけで、彼はいつもの顔になる。
シンより年も経験も上の──信頼と尊敬を寄せるべき隊長の顔に。


彼の名はキラ・ヤマト──二度にわたる大戦の英雄であり、今はシンの直属の隊長になる。



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