SEED&Destiny 1
□海に、癒される
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〈……〉
モニターの向こう側から、黙ったまま強い眼差しを向けてくる女性が、シンは苦手だった。
「自分が、護衛しますから──」
若くしてプラント最高評議会議長の立場にある彼女は、シンにホットラインの使用を許可した。
どう好意的に見ても、シンの事を気に入らないのは明らかで。
なのにホットラインを繋いだのは、偏にキラのためだろうと言うことは、シンにも解っている。
だから、今回初めてその通信ボタンを押した。
〈……〉
「……」
プラントだけに留まらず、広く愛される歌姫は、厳しい表情をシンに向ける。
シンの意図を探ろうとするように。
その眼差しからは、彼女はシンを許してはいないのだと知らしめる。
「あ、あの──」
〈解りました。キラにはわたくしからお話しますわ〉
「では…」
〈キラを休ませる事には、わたくしも同意しますわ〉
キラの名を口にする時だけ、彼女の表情が和らぐ。
〈シン・アスカ〉
「はい」
〈キラの護衛をあなたにお任せして、よいのですね?〉
「はい! この身に変えても、守ります!」
〈……シャトルと滞在先はこちらで用意しますわ。詳細は後日知らせます〉
忙しい身の上なのも確かだけれど、それだけではない、口を挟むのを許さないような口調で、彼女は一方的に通信を終えた。
モニターから彼女の姿が消えると、シンは大きく息をついて、椅子の背にだらりと身体を預けた。
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