SEED&Destiny 1
□かわいそうなクジラ
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艦内の後部展望デッキに捜し人の姿を見つけ、シンは少しばかり呆れたような溜め息をついた。
「ホントに此処が好きですね。あなたは」
「羽を持つもので、空が嫌いなものはいないよ。だからかな…」
穏やかな声が先ず返り、ゆっくりと身体ごと振り向いたキラは、自嘲のような苦笑のような──曖昧な微笑を浮かべていた。
羽を持つもの──羽のあるMSと言われ、真っ先に浮かぶのがキラの乗機《フリーダム》だ。
シン自身の乗機である《デスティニー》の方が、余程らしい翼を持っているのだが、性能か技量によるものか──あるいはその両方からか──自由に空を飛び回るイメージは《フリーダム》の方が圧倒的に印象強い。
「ぼくは、混ざってるからね…」
曖昧な笑みを浮かべたまま、キラがそんな風に続ける。
「はぁ? …何の話ですか?」
今だけでなく、時々キラはこういった謎掛けのような物言いをする事がある。
そしてこんな時、決まって満足いく答えを教えてはもらえない。
「かわいそうなクジラの歌って知ってる?」
この時も、シンの質問など置き去りに、そんな事を唐突に言い出した。
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