SEED&Destiny 1
□あなたは早過ぎて、俺は遅過ぎた。
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面会謝絶の集中治療室に忍び込むのは、いつもの事だった。
此処は、集中治療室なんて名前だけの、白い牢獄。
治療が意味を為さなくなったのは、もう随分と前の事だ。
それでも諦めきれない人々は、彼を此の部屋に閉じ込めた。
もう、解き放ってあげればいいのに。
そう思いながら此処へ通うようになって久しい。
だが、これまでそれを実行に移す事は出来ずにいた。
彼に自由を──そう思う反面、喪われるくらいならこのまま…。
そう思う自分が、確かにいたからだ。
誰もがそんな思いに、二の足を踏んでいたのかもしれない。
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