SEED&Destiny 1

□ツバメの夢
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「いらっしゃい」

スライド式の扉を開けて顔を出したシンを、穏やかな声が迎えた。

「起こしちゃいました?」

シンがそう尋ねると、彼が小さく笑う気配がした。
その目の高さがいつもと違う理由に、傍へ寄っていって気付く。

側に立つ点滴台のチューブは、相変わらず胸元に延びていて、清潔に保たれている白いシーツの上に力なく投げ出された腕にも点滴の針が刺さっている。

それはいつもと同じ光景。
ただ違うのは、背中にクッションを敷いて、身体をほんの少し起こしていた事だ。

「今日は気分が良くて」

シンの視線に気付いて、彼はふわりと微笑んだ。

開け放たれた窓から入ってくる風が、カーテンを揺らし、差し込む光に彼の茶褐色の髪が淡く透ける。
潤んで見える菫色の瞳が、眩しそうに眇められるのを見て、シンはカーテンを引き直す。


この、今にも光に溶けて消えてしまいそうな人が、2度に渡る大戦の英雄だと、一体誰が信じるだろうか。



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