SEED&Destiny 1
□海に、癒される
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──…
時折、ひどく淋しそうな目で遠くを見ているのは、もしかしたら海が見たいんじゃないかと、そう思った。
あの大戦が始まるまでの2年の間、海に癒されたのだと聞いたことがあったから。
「地球へ行ってみませんか?」
この砂時計型のコロニーにも海と呼ばれているものは、一応ある。
だが人工的に整えられ、不自然な美しさを保つそれは──地球の、本物の母なる海に触れた事のある者にとっては──単なる巨大な水たまりでしかない。
だから、地球へ。
そう提案してみた。
少し冗談っぽい声音になったのは、無意識に拒絶を恐れたせいだと、少し遅れて気付いた。
「それもいいかもしれないね…」
穏やかな声で返ってきたのは、肯定とも否定ともとれる曖昧なもので。
─その瞳は俺を映さない。
目の前にいるのに。
何処を見ているんですか…?
あなたの目に映るのは、いったい何なんですか…?
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