長文
□優しい気持ちで -黄昏-
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アカデミーの屋上。
思えば,オレたちカカシ班はここから始まった。
あん時はまだ,サスケも一緒だったな。
ぐっ
手すりをつかんでいる手に,自然と力が入る。
「そんな暗い顔して,なに考えてんのよ。
こんなに綺麗な夕日,めったに見られないんだから,もっと景色を楽しみなさいよ」
「サクラちゃん…」
今は黄昏時。
任務も終了し,報告を済ませたあと,なんとなくアカデミーに行きたくなって,カカシ先生とサイに別れを告げて,サクラちゃんと二人で寄ってみた。
残念ながらイルカ先生には会えなかったけど(もしかしたらラーメンおごってもらえたかもしんないのに!!),サクラちゃんが屋上に行きたいって言うもんだから,後について上にのぼった。
確かにきれいだ。
空には雲一つなく,太陽は西に傾き,最後の光を投げかけていた。
今みたいな空の色を,あかね色って言うらしい。
その色が,隣にいるサクラちゃんのピンク色の髪と混ざり合って,お互い溶け合ったような,何とも言えない不思議な色を醸し出していた。
……すっげーきれいだってばよ…。
「ちょっと,何なのよさっきから!!
人の顔をジロジロと!!」
「あ,いや,何でもないってばよ」
今,オレの顔が赤いのは,夕日のせいってことにしておこう。
視線を,サクラちゃんから遠く広がる里に向ける。
この里は,こんなにもきれいだ。
オレの大好きな里。
この平和が,いつまでも続いてほしい。
「…なぁ,サクラちゃん」
「ん?」
「この里って,こんなにきれいだったんだな」
「…そうね」
「オレは…,オレは,この里を守りたい。
大切な人達がいるこの里を。
オレの大好きなこの里を!!」
「ナルト…」
「サスケは,いつか戻ってくるかな…」
空を見上げて思った。
「絶対,戻ってくるわよ」
サクラちゃんも,つられて上を見上げてた。