短文

□オレンジの海
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「海だ―――!!」


イヤッホーと叫びながら,波打ち際まで走っていくナルト。



「ちょっと,待ちなさいよ―!!」


後を追うサクラ。



「二人とも元気だなぁ」


既に二人から遠くなってしまった場所で,感心したようにサイが呟いた。









今回のヤマト班の任務先は,海に近い所だった。
内容は,要人警護。

無事に任務も終了したので,一泊する予定の旅館に戻る前に,海に行きたいと頼んだのだ。

三人の,いや,二人の必死なお願いにヤマトは苦笑しつつ,
「じゃあ三人で行ってきなよ。僕はやらなきゃいけないことがあるから,先に旅館に戻ってるからね」
と許可したのだった。









「きれいね―」


幾分か西に傾いた太陽の光を,キラキラと反射させている海を見つめて,サクラは呟いた。



「ほんとに,きれいだってばよ」


サクラの隣で,ナルトも海を見つめていた。



「僕には海の何が良いのかよくわからないな。ただ水が広がっているだけなのに」


すぐ後ろで,サイの声が聞こえた。
やっと二人に追いついたらしい。



「はぁ!?
それが良いんじゃね―かよ!!
すっげ―遠くまで広がってんの見るだけでわくわくすんだろ,ふつ―」



「それに,こんなにきれいじゃない」



「はあ…」
そういうものなのか…


少し考え込む。





バシャッ





いきなり,顔に水がかかった。


「うわっ,何するんだよ,ナルト」



「お前が隙見せっからだろ―」


ナルトは,ニシシッといたずらっ子のように笑っている。



「コラァ―!!
私にまでかけんじゃないわよ,バカナルト―!!」
服濡れちゃったじゃないの―!!

そう言って,サクラもナルトに水をかける。

こうして,三人の周りでわ―とかキャーとかいう笑い声と一緒に,水しぶきが飛び交った。

二人がたてる水しぶきでぐしょぐしょになりながら,
「これを青春っていうのかな」
とサイがその場に突っ立ったままボソッと呟いた。
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