Oノベル
□愛ってヤツは
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今夜も、高級な雰囲気の酒を飲み、高級な雰囲気の女を口説く。
俺の日常だった。
俺が入店してから、1ヶ月が経った。
未だに力を抜いてると、その場の波に呑み込まれ…、いや、波に溺れてしまいそうになる。
「オラ、ボーッとしてんじゃねぇよ新入り!」
「いだっっ!」
店のナンバーに罵声を浴びせられ。
ゲストから見えないように蹴られ。
やっぱり向いてないのかな、なんて悩むお年頃の俺。卯月鳳獅(ウヅキタカシ)勿論源氏名、彼氏募集中な19才。
「イタイッス!!」
「ルセェ、6卓のボトル空けてこい。」
冷たい視線で、ノーと言わせてくれないこの店のナンバー3兼フロアチーフ、如月征邪(キサラギユキヤ)、勿論源氏名25才。
「はいぃぃっ。」
未だ、指名がいない俺は、新規客に付くか、ヘルプで酒を飲むかしかないのだ。
「ぁら〜、鳳獅君じゃな〜ぃ〜。」
(うるせぇギャル)
「お久しぶりですね、アイナ(源氏名)さん。」
お前ナニジンだ、みたいな顔をしたベロベロのギャルがすりよって来る。
「そぉ〜なのぉ〜!今週、ずぅーっとアフター行ったりしたのぉ〜。」
偽物の金髪を弄りながら、唇を尖らせて、でも視線は毛先でも、俺でもなく、歩き回る1人だけを追っている。
(ウゼェ…)
「大変でしたねぇ〜。今日はゆっくりしてってくださいねぇ?」
「ぅんっっ♪征邪が来てくれたらぁ、シャンパンぁけようね♪鳳獅君も一瞬にね♪」
(お。ラッキー)
「はいっ。嬉しいっす!僕、アイナさん大好きですっ。征邪さんもソンケーしてますっ。」
「あっはは〜。鳳獅君もナンバー入るようにがんばんなきゃねぇ〜。」
私若い子も連れて来たげるぅ〜、なんて言っても。
やっぱり、女の子は可愛いとは思わねぇ。
俺の好みは、スラッとして知的な会話も下ネタも満載な征邪さんみたいな男性。
だってあの人凄いんだゼ。
フロアチーフに昇格して、営業はしないのかと思ったら、それでも毎月ナンバー3。
店の仕切りは実質チーフの仕事だから、同伴はしなくなったけど、その分営業力でカバーしてる。
スタッフの誰より早く店に来て、一番最後に帰っていく。
仕事以外では、話した事まだないけど。
仕事に惚れたんだ。
あのケツにぶちこんでみてぇ!
…なんて、言ったら明日は来ないんだろうなぁ。