戸惑いの番外編
□いただきます。
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「龍、ご飯の前は《頂きます》だよ?」
日曜日の朝…いや、昼の事だ。ニイが作ってくれた飯を食べようとしたらニイに止められた。
「…イタダキマス?」
謎の言葉を紡ぐニイに俺は眉を寄せる。
「………え?…龍知らない訳じゃないよね?」
「…ニイが飯食う前にする呪(まじな)い。」
「…龍、本当に今までどんな生活してたの?」
ニイは渋い顔をして言った。
ニイが言うには命の糧になった動植物に対して敬意と感謝の意を込めて行う日本人の風習らしい…。
実家では洋食や中華等の食事マナーは習ったが父親が和食嫌いのため日本食は殆ど食べなかった。
家も洋風一色で畳の部屋などあるわけもなく…知識でしか知らない。
「…どうやるんだ?」
「えっと、両手を合わせて…頂きます。」
ぎこちない動きでニイの真似をする。
「……イタダキマス…。」
「うん、上手!」
「…そうか。」
意味は分からない。
料理になった動植物に声が届く訳でもないだろう…。
でも、ニイの笑顔が見れるなら…しても良いかもしれないと思う俺は…ニイ馬鹿なのかもしれない。
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