僕と一つ屋根の下で
□始まりの悪夢
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「よぉ、長門」
ドアノブを回すと、見馴れた部室が広がる。
そこには部室の机や椅子やその他あって当たり前となっている物達に紛れる長門の姿が当たり前にあった。
俺が声をかければ、瞬きの間に見逃してしまいそうな位の動作、と言うより目の動きで俺を一瞥する。
それがあいつ流の挨拶だと認識できるのは、一年以上部室にせっせと足を運び、やっかいな事件に次から次へと巻き込まれた俺の経験のお陰だ。
「はぁー.....」
教室から部室までは大した距離ではないのだが、何故か今日は長く感じた。
それが長門の仲間や宇宙人たちの情報改変でないのなら、ただ単に俺の体の調子が悪いということになるのだが。
「長門。お前、今日廊下の長さを変えたりしてないよな」
こんなこと、本気で聞いている訳じゃない。
ただ、自分の体調が悪いか確かめたかっただけだ。
「幅も長さも変えていない」
「そうか」
今日は早めに寝るとするか。
「そう」
......会話がない。
まぁ長門相手に微笑むような会話ができるなんて期待はしていないし、第一長門は枕サイズの本を食い入るように読んでいる訳だが、それにしても沈黙とは一体何だと考えはじめた所でため息をつき、喉が渇いたが朝比奈さんはまだかと図々しくも考えてドアを見た所で、静かにノックが鳴った。
ガチャリ...
「どうも。今日は朝比奈さんが早退したようですよ」
古泉か。
いや、それより何故だ。何故俺じゃなくお前が知ってるんだ。
「そんな怒らなくても...帰りにたまたま会っただけですよ。いとこが来るとか言って、軽い足取りで可愛らしかったですよ」
何だと?!
...あぁ拝みたかった。
妄想に留めておこう。
「怠い...古泉、喉が渇いた」
部室に居る意味はハルヒが商店街をパトロールするくらい無駄だということはわかっていたが、帰ったらもしかしたら世界に終わりが訪れる可能性がある。
わざわざ世界の危機に直面させなくたっていいだろう。