Novel

□s
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薬を飲んだあとの唐突な凄まじい眠気にまけて床の上で倒れて寝ていた。
重たい瞼を持ち上げて時計を見ると3時間はたっているだろうか。日が沈んで外は暗い。
まだ少し気だるさが残る身体を起こして雨戸を閉めようとしたらタンクトップに隠れているはずの胸がいたみ、ありえない重みを感じて俺は硬直したのだ。

黒いタンクトップをしたから押し上げているのは紛れもなく女のそれでご丁寧に人並み以上の大きさをしている。
背も少し縮んでいるらしく、ちょうど良かったタンクトップは片方の肩が露出してしまう。
ハーフパンツはゴムだからまあするんと下がることはないにしろ少し引っ張られると簡単に下がってしまいそうだ。
肌には弾力が増し、どこもかしこもふにふにと女性特有の肌をしている。もちろん私の息子も綺麗さっぱりだ。

どうしたものかと考える。
ランピーの阿呆面を殴りにいくのは明日にして今日はもう寝てしまおうか。どうせなにをしてもすぐに戻るわけがない。
さっさと布団の支度をしてなにも考えず眠りにつきたい。とりあえず雨戸を閉めようと窓を開けるとたまたまやつが見上げていた。
(一番見られたくないのに)


不運な事は大体続くものだ。
そもそもこの時間に彼がいるのは珍しい。以外と規則正しい生活をしているのでいつもなら9時を過ぎたら寝る支度に入っている。
軍人時代の決められた起床時間とか就寝時間が抜けないのだろう。
眠たくなるわけではなくて、寝ないといけない気がしてしまう、と言っていた。
まるで子どものようだけどそれほど過去はトラウマなのだ。

挨拶もなしに雨戸をがしゃんと閉めたのが気に食わなかったのか隠すことのできない乳房が目に入ったのかドンドンドンドンドンドンドンドン乱暴に扉を叩く。


「おいスプレンディド、いるんだろ?開けろよ」

「ふりっぴ、・・・・っ!」

「・・・スプレンディド?」

身体が変わってから初めて声を発して驚いた、声帯まで変わっているのか。声がいつもと比べ物にならないくらい高い。

「なにかあったのかよ」なんて少し不安な色をのせて声をかけてくる。いつもナニかしてるのはそっちのくせに。
心配してくれてるフリッピーに良心が痛むけれどこんな姿を見られたくはないから今は帰ってもらいたい。
ただ喧嘩になっては後々めんどくさい。こいつは一度腹を曲げるとこっちがどれほど謝っても聞いてくれないから長期戦になる。

次第に声のボリュームも上がってきてご近所さんに迷惑がかかるから扉をあけてやろうか、このまま黙っていても絶対に逆効果で意地でも帰らない気がしてきた。なにしろこんなに心配してくれている。それを無下にする事は出来ない。あぁ、俺って人がよすぎる。

自分が女になった事実を受け入れるのはしんどい、けれどフリッピーにならと、俺は鍵を回した。


(肩が凝ってきました)

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