Novel

□nyota
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ずきん ずきん
頭が痛む。熱に浮いている感じがする。
例のごとく、今日も悲鳴を聞いてピンクのふわふわ髪の彼女を助けて家まで送り届けたのだが。
(そういえばずっと顔を俯かせて黙りこくっていたけれど)
自宅に帰ってジャージとマスクを脱ぎ捨て、タンクトップとハーフパンツだけになる。
気持ちも悪くなってきた。あのやぶ医者に頼るのは些か不安だけどこの町にまともな医者はいない。
事前に電話をして眼鏡をかけて病院へとむかった。

かったるそうに座っていたのはランピーで、すっとぼけた顔にひょろながい細身の体は軽く曲げればポキッと音をたてて折れてしまいそうだ。
水色の髪に黄色のメッシュが二ヶ所。
それらしくカルテをみて片手で首にかけた補聴器をくるくるいじっている姿は医者なんだろうが、なんの責任感も感じない薄い面は本当に信用ならない。

「スプレンディドが来るなんて珍しい」

「・・・体調管理には心掛けているんだけどね、どうも熱があるようなんだ」

「ふうん。・・・確かに少し熱いかもねえ。他には?咳が出るとか、鼻水が詰まるとか」

「気持ちが悪い、吐き気がする。」

俺の額に骨ばった白い手のひらをのせると至近距離で顔を覗かれたので目を反らして答えた。トラブルメーカーでありほとんどの事件の加害者である彼はヒーローである俺と対面するのが多い。
ヒーローというのはいかなる時でも素性をばれてはいけないのだ。

ランピーは助手らしいランピーのクローンのような緑のやつにぽそぽそなにかを伝えると、そいつはこくりと頷いて奥へ引っ込んだ。
今薬を出すからね。とまともな診療もしていないのにカルテになにか書き込んでいるが、元々病院に来る事が少ない俺はだいたいこんなものなのかと思い、緑のやつが持ってきた薬の包み紙を貰う。

「家に帰ったら食べ物を胃に入れてからこれを飲んでね、一日二回だよ」


説明をかるく受けて、俺は病院を出たのだった。



そしてやつはやはりやぶ医者、それどころか頭のイカれたどうしようもないあんぽんたんな事を再認識した。






(どうして神様!)

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