Novel

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「なんだいこれは」
「エプロンだろ」
「そういう意味じゃあないんだよフリッピー君」

今日は特に仕事もなくサササッと終わらせて帰ってくると何故かフリッフリのエプロンを手に持ったフリッピー君が俺を出迎えてくれた。
彼のどや顔に悉く似合わない薄ピンクのエプロン。胸の前でハート型になっていてその周りをふりふりのフリルが覆う。
その下に続く布部分のふちもショルダーのふちもふりふりが満載だ。確かに可愛い可愛いのだけれどそれを俺に求めるのはなんだか少し

「・・・違う気がする」
「?、着ろよ早く」
「第一声がそれかい・・・?」

溜息をはき目の前のフリッピー君を軽く手で押しのけて夕飯の支度をはじめようとキッチンへ足を運ぶ。
どうせこいつも何も食べちゃあいないんだろうと思って冷蔵庫を開け食材を確認、男二人分の一食というのは結構量を取るのだ。
するといきなり後ろからバンッと冷蔵庫を閉じられた(おい今首挟むところだったぞ)まあ犯人は一人しかいないのでくるりと
後ろを向いてやつを視界に入れようとしたらそれよりも先に俺の体をがしりと掴んで向かい合うように乱暴に壁に押し付けられた。
おい待てまだシャワーも入ってないしお腹すいたし汗臭いからと言いながらジタバタする俺をよそに器用にボタンをはずしていく。
俺の方が腕力があるから抵抗なんて簡単にできるがこの前夜這いをかけられたときに暴れた拍子に顔をぶってしまってそのあと散々な目に遭った。
自分の口からは言いたくないのでそこはかとなく察してほしい。そんなわけでまともに抵抗も出来ない俺をいい事に一糸纏わぬ姿にされた。
でもこんなに性急に服を脱がされた事は・・・・・・・・・・・・まあ無くはないけれどそういう時は大体決まってフリッピー君の機嫌が悪い時とか
本当に酷い時は破り捨てられる。こんなに丁寧にいきなり服を脱がされた事はない、俺の記憶上では。
意外とフリッピー君は抱きしめあうとか甘いキスをするとかお互いの体温を感じあうとかそういう可愛らしい触れ合いを行為の前に求めたりするのだ。
それは俺も嫌いじゃないしどきどきするし段々彼に溺れていくような錯覚に陥るのは後の快感を増していたりした。
いつもと変わったフリッピー君に多少どきどきしているとその理由は彼の背後にちらりと見えた。


---


「相変わらず女のようにお前の飯はうめえな、オトメンってやつかお前」
「裁縫や料理は趣味の一つだけど裸エプロンで君に料理を振る舞う趣味はないよ」
「ランピーの野郎に貰ったんだが・・・割とゲテモノだな・・・」
「当たり前だろ・・・」

強制的に着せたくせに勝手にげんなりされても困る。例のエプロンは今俺の身体を隠してくれている。
余すことなく使われるフリルが目に毒だけど裾の部分がギリギリ俺の雄を覆ってくれているのは有難かった、というかまだよかった。
そのまま黙々と食べ進めてどんどん皿の中の料理が減っていく。裸エプロンという事実はとてつもなく耐えがたい羞恥だが飯を食べる上で
特に不便な事は何もなかった。うん、まあ俺の飯はうまいと思うし。
するとカラリと音がしてちゃぶ台の足を見ると青い箸が片方落ちていた。フリッピー君の箸だ。
それをただじいっと見ていたのだがハッとし、拾うために身体をを後ろにすこしずらし、屈む。
拾うのは俺なのにつられるようにフリッピー君も体を前のめりにした。気にせず箸を拾ってそのまま軽くゴミを掃い、洗ってきてやろうと
立ち上がろうとするとなにやらねっとりとした視線に気づいた。目だけ彼に向ける。

「なんだい」
「ずっと気になってたんだけどやっぱりこう見ると襟の所から乳首とちんこが見えるな」
「・・・・・・」
「風俗的なとこにいる気分だ」

くだらない、放っておこう。今日はちょっと頭のねじが数本足りてないのかも知れない。
立ち上がるために上体を起こして正座していた片方の足を尻の下から引っこ抜いて立て膝の体勢になる。
そしてその途端にばたりと押し倒される、目の前にはにやにやと微笑む野獣の姿が。

「なんだよ・・もう・・・・」
「勃起してんじゃねーよ変態」
「こんな事強要させてる君に言われたくはないよ変態君」
「そうかよ」
「・・・っ!」

布越しに雄の存在を確かめられる。この流れはまずい。非常に。

「ごっ、ご飯はもういいのか!」
「もう食ったよ」
「は、はや・・・・・・・」

チラッと皿を見ると確かに彼のために準備したご飯は全て胃の中におさまっていたらしかった。
撫でていた手が段々形を覚えようとするかのようににぎにぎと、緩やかだけど確実に性的な快感を伝えている。
俺の雄はというと三十路前でもまだまだ元気らしくほんのり熱を持ち首を傾げている。
それを見てまたお得意のにやりとした顔で俺を捉えると一瞬だけ唇を塞ぎこう続けた。

「ここですんのとベッドでするの、どっちがいい?」
「・・・・ベッド」

心底楽しそうにくつくつと笑うとフリッピー君の手が俺の膝の裏と脇の下にのびて一気に宙に浮かぶ。
よくもまあ大の男を姫抱っこする気になるもんだと感心し、食卓をフリッピー君の肩越しに見て皿がすべて出しっぱなしなのに気がついた。
片付けや掃除は気付いたときにぱぱぱっとやりたい主義なのだ。あれを見て見ぬ振りなどできなかったのだが。
正直俺もさっきの触り方が焦れったくて早く彼に触れてほしかったし何より時たま腰に当たる彼の股間が驚異的なもので
すっかりその気になったフリッピー君を待たせると後が怖いので「一回だけだよ」と言って体重を預けた。


男のロマンとは程遠いものですが
(まあこれもありだろうよ)

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