Novel

□ge
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「・・・いらっしゃいませくそやろう」
「そんなこと言う店員初めて見たぞ俺は」
「・・・・」
「スマイルください」
「・・・・チッ」
「舌打ちしない」

スプレンディドの知り合いの働いているかの有名なあそこでバイト採用された俺はどうしてもあの薄っぺらい笑顔が出来なかった。
大体何処でバイトしたってこの荒々しい性格が災いしてクビになってきた。(店長に掴みかかったり店を荒らしたり客と喧嘩したり様々だが)
やっと乗り越えた研修期間も過ぎてこっそりスプレンディドが覗きにきたらしく、俺の接客態度を見て勝手に腹を立てている。
だから今こうしてスプレンディドの家に帰宅後、強制的に訓練させられているわけだ。

「そんなんじゃあ君あれだぞ。小さい子泣いちゃうぞ」
「カドルス達は泣かないじゃねーか」
「あの子たちは異例!特別!」

それからまた「接客七大用語」だの笑顔の作り方だのを熱弁されてもう飽き飽きだ。正直実家に帰りたい。
ちなみにカドルスってのは近所のガキで。俺たちが殴りあいしてても笑って突進してくるような正真正銘空気の読めないクソガキ共。

スプレンディドはというと話を一切聞いていなかった事に勘付きグッと顔を寄せて「聞いているのか!」と至って真面目な顔で問いかけてくる。
あまりにも真剣な面立ちで阿呆面を目の前に晒すもんだからなんとなくその口に口をあわせてやった。一気にぽぽぽと頬が染まっていくのが見える。

「!フ、フリッピー!!」
「・・顔がちかかったからよ」
「・・・俺は真剣だったというのに・・・・」
「面白かったぜ、お前」

ふと自然に笑みが零れるとスプレンディドが息を詰まらせるように俺を見て、また朱が走ったのを感じた。
俯いてボソボソと呟いているのを聞きとると「なかなか綺麗に笑えるじゃないか」、と。
スプレンディドが照れた理由を察する。

「へえ?こう笑えばいいのか?」
「・・・」
「なあ、どうだよ?スプレンディド」
「おい」
「こっち見ろって」
「君わかっているんだろう」
「ん?」
「・・・」

目を細め、自然を装って笑う。(というか正直状況を楽しんでいるので自然と顔が綻ぶ)
断固として俺を見ようとしない顔を俺の前に固定して微量ながら俺より背の高いこいつの顔を覗き込む。
今なら言える。


「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ?」
「・・・そのスマイルは俺が買い占めるから、他の客に見せるんじゃない。」


君だけに0円
(楽しそうなあなたの笑顔)


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