Novel

□こわいのだよ
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変化と言うのは怖いものだ。
いい面にしろ悪い面にしろ、「今までずっと同じを保っていたもの」と思っていたものがぱったりと違うように見える。
俺の目にはフィルターがかかっているのだろうか。

学校の帰り道。部活もない俺らはいつも通り二人で帰路につく。
仲が良いと言われるが知ったこっちゃあない。おれらにはこの距離感が普通だ。
さて隣の兄貴を見ると俺より数mm低い位置にある目を帽子を目深に被ることでほどほどに隠している。
以前に見にくくないかと聞いたら「このくらいがクールなんだよ」だと。
Yシャツの上にベージュのセーターを着てスラックスはほどよく腰ではく。うちの兄貴はシャレオツ、だ。
常に視線をしたに向けて歩行する兄貴は、睫毛が長い。量は一般的なのだろうが。

「おいリフティ」

顔をそのままに視線だけ寄越す。
「なんだよ兄貴」
「あんま人の顔じろじろ見んなよ」
バツが悪そうに吐き捨てる。
照れたの、なあ照れたの?
まあ穴が開くほどみてたのは事実だ。兄貴は飽きない。

そう、飽きないんだ。
同じ顔なのに。


フィルターがかかっているらしいおれのつぶらなおめめは兄貴の顔を一度捉えるとなかなか離してくれない。
似たような顔なんて鏡見りゃいつでも拝めるのに。
兄貴に「なんでもねえ」と返したらフンと鼻を鳴らしてまた俯き気味に視線を戻した。
いつからだったか忘れたが、兄貴がキラキラ光って見える。
照らされてるような、輝いてるような。
兄貴は俺の前で変化した。
近所のガキのギグルスに言ったら急に真っ青な顔でペチュニアの元へ走って行った。
顔も髪形も目付きの鋭さも、体格も声も手の器用さも。
何処をとっても兄貴と同じなのに急に訪れたこの違いはなんだ?

ああ怖い、
(俺の顔はこんな可愛くはないのによ)



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