Novel

□常識
1ページ/1ページ



物足りないのは何故だろう?
新聞記者の私は久しぶりの休暇をもらって遠出をしている。一人でだ。
元々一人でいるのは苦ではないし、優雅な時間を過ごすのだって好きである。しかしこの空虚感はなんだろうか。

私は英雄だがそれはあの異例な町の住民を救う事が義務付けられているだけであり全人類のための英雄ではない。
今日は英雄業も休みだ。持っていた仕事は全て終わらせてきたし昨日作ったパンもふわふわに焼けて手元にある。

・・・あぁ、彼か。いわゆる恋仲の彼。趣味の悪い軍服を着たはた迷惑なフリッピー君。
彼の射殺すような黄金の瞳といやしく笑う口と痛んだきしきしの淡い緑の髪の毛、それが足りないのか。
身体の奥底からメラメラと感情の昂りが押し寄せてくる。私は彼との闘争を楽しんでいる節があるのだから。
あぁ、あと2日もあるのに。私は耐えられるだろうか。(あのナイフを突き付けられたいのである)

大きめのトランクにはラフな服装にお気に入りの下着。変身セットは置いてきて割と余裕がある。
次の有休は彼も持ち運ぼう。きっと四肢を分断して綺麗に折り畳めば入る、明日には元通りになっている筈だ。
仮にも恋人なのだから多少の事は許してくれる。君と二人でバカンスだなんて楽しそうじゃないか。


男の常識
(街の外は非常識)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ