Novel

□腹が減っては
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(高校生パロディ)




1月5日PM18:27。突然だが俺は今双子の弟のレポートを必死に書きあげている。長期休みに(つっても、冬休みは2週間ちょっとだけど)必ずついてくるオマケだ。俺はもうとっくに終わっているんだけどな。
あれほどやっとけっつったのに遊びまくってたどうしようもない弟は登校2日前にボロいスクバの奥からぐしゃぐしゃなこいつを引っ張り出して焦りだしている。
元々勉学に興味関心意欲のない俺らは普段の成績がよろしくない、どころか悪い。昼登校なんてザラだ。単位は取得できるギリギリを保っている。
ところがこのレポートを出さないと総合学習の単位が貰えないらしく、そんでこの長期休みの分の授業も出なかった扱いになる。つまりこのレポート提出は週2回の授業×2+単位の評価なわけだ。
自分で課題を決めて学校が用意したレポート用紙6枚にびっちり3000字以上。きもっ、もう一度言う。きもっ。
どうかんがえたって俺たちの空っぽな脳味噌じゃこいつを埋めるのは無理な話。俺だって2週間でちょっとずつちょっとずつ頭をひねって埋めたくらいだ。弟にゃ死んだって無理だ。

そこで弟より少しばかり頭の回転が速い俺がじっくり二日かけてやってやるかわりに、家事を全て弟に押し付けた。まあほとんどはこいつがいつもやってんだけど。

「兄貴ー味噌汁の具なにがいいー?」

俺がわざわざこいつの課題をやってやる理由なんてこれしかない。弟が留年だなんて余計な金をまた使う羽目になる。サクッと卒業したいもんだ。
そんでテーマはこれだ。「水彩用の筆で一番適してるのはなにか」。そんなんググりゃ出てくるわ。とことん手先が器用な美術的なセンスも持ってる。とにかくめちゃくちゃ器用。
だからちょーっと他人から金を拝借する時も計画をするのは俺、あいつがその間にパクる。まあ簡単にいえばスリだな。

「あーにーきー?」

そんでこいつがトチッた時は俺は速攻でズラかる。大体共犯でとっちめられるけど。そんで手くせもわりぃから俺が指示しなくてもサッと盗ってくる時がある。
まあ金ってもんはあればあるほどいいもんだから俺は何も言わないんだけど、こう思い切りがよすぎるというかだな・・・。いけね。レポート書かなきゃ。

「兄貴っ!」

「うぉわぁああ!?」

後ろからガバッと服んなかに手を突っ込まれて無防備の腰に宛がわれる。直前まで料理をしていたこいつの手は水気でしっとりしていてこたつでぬくぬくしていた俺にはものすごい大ダメージだった。
イヒヒヒヒッと意地悪く笑うこいつに軽く裏拳かましてやって作業に戻る。あーだめだ、わかんね。俺は美術はさっぱりだ。

「いってえ・・・兄貴ってば、味噌汁の具なにがいいの?」

「なんでもいい」

「つーか書いてる?できそう?なあ」

「うるせーってば今やってんだろうが・・・くそ・・こんな腹立つテーマにしやがってわかるわけねえだろ・・・」

「だからそれの資料まとめておいといたろ」

「それでもわかんねえもんはわかんねえんだよ。なんだよやっぱ家事俺やってお前やる?三食カップラーメンでいいなら」

遠慮する、と言って台所に戻った。悪いが俺は料理も壊滅的だ。俺が唯一家事で出来るのは風呂掃除と洗濯ものを干すくらいだ。
タイムリミットはもう一日とちょっと。あぁちくしょう!終わる気がしねえがとりあえず飯だ!

腹が減っては戦はできぬ。
(豆腐と油揚げの味噌汁が身にしみます。)

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