Etc

□可愛い君
1ページ/1ページ





放課後。
友達と歩いていた風早は昇降口についた瞬間、教室に忘れ物をしていた事に気付いた。




「わっ…悪ィ、俺忘れ物しちゃったから……先帰ってて!」



「お、おう。…お前はどーすんだ?」



「俺は後から帰る!!…んじゃーな!」


「おう、じゃあな」



(や、やべぇ…ピンの奴に怒られちまう!)



風早は内心焦りながら教室まで急いだ。




***




教室の扉を乱暴に開き自分の席まで走ると風早の後ろの席の、風間碧亥が昼寝なのだろうか、眠っていた。



「……風間……?」


しっかりと瞑られている瞼。白くて綺麗な肌。茶色いけど校則違反には違反しない程度の茶髪、そして規則正しい寝息。
――全てが俺を誘っていた。



「…お、おい…風間。起きろって…」


「…ん」



風邪引くぞ、と苦笑いを浮かべつつ彼女の肩を揺さぶった。――すると瞳をゆっくりと開いた。


「…ふわぁっ……! う、嘘…いつの間にかこんな時間に…」


寝起きだからなのだろうか、寝癖がぴょんと立っていた。
そんな寝癖も凄く可愛らしくて、慌てている姿もとても可愛くて。



「………わいい…」


「へ?…風早君何か言った…?」


「えっ!…お、俺なんか言ってたか?!」


「ごめん……よく聞き取れなかった」



ほ、と胸を撫で下ろし、安堵の溜め息を吐いた。


――良かった、バレてねぇ。




「ところでどうして寝てたんだよ?この時間がねみーのよく分かるけどさ」


「…いやぁ、龍の話聞いてたら眠くなって〜…。
龍さ、何かボソボソ喋るじゃん!言っちゃ悪いけど!!」


――“龍”。そうか、そうだよな…ガキの頃から一緒なんだもんな。
でも俺の胸はチク、と痛んだ気がした。



「……あ、あぁ。そうだな」



まともに話なんか聞けなかった。――っくしょう、何で他の男の話をすんだよ。しかも笑顔で!
…可愛いから許すけどさ。でも他の男の話聞くのって結構辛いな。…聞いてねえけど。



「………風早、どしたの?」


今日の風早ちょっとヘン、と怪訝そうに俺を見た。
う………あーやばい。すんごい照れる。目を合わせられなくてつい俺は目を逸らす。



「…んでもない…」



はぁ、と溜め息をつきつつしゃがみ込んだ。――何だ俺、カッコワリーな。
赤く火照った頬を少しでも冷ます為に、俺は頬に手を当てた。うわ、超熱!



「…………そう。じゃあ私帰る」



未だに怪訝そうな顔をして、風早を見ていた。
そして出て行こうとする碧亥の腕を咄嗟に掴んだ。



「!?…ど、どーしたの…」



目を丸くして風早を見つめる。風早は少し気まずそうに視線を再び逸らす。



「……風早…?」



「……俺、俺…………俺、風間の事好きなんだよ!」


「なっ!……ほ、ほんと…?」



「……あぁ、ほんと」




頬を赤くさせて、気持ちを告げた風早。彼を見つめていた碧亥もつられて赤くさせ、俯いた。



「わ……私も好きだったけど……」


「まじ!?」



「う、うん!でも爽子ちゃんの事、ずっと好きだったんだと思ってた…」


「黒沼は友達としての“好き”!…風間は恋愛としての“好き”!
…うっわ何かスッゲー恥ずかし…」


手で真っ赤になった顔を隠した彼を見て、くすくすと碧亥は笑い出した。風早は目を丸くした。


「ふっ……風早可愛いんだけど…!っふふ……。」



「かっ……!?ど、どこが!…お、俺ずっと他の男子に嫉妬してたんだからなぁ?!」


碧亥は目を丸くして、そして笑った。


「風早カワイー」


「ね、ねーよ。……お前の方が可愛いし!
ってゆーか、俺の事も名前で呼んでくれよ」


「? 風早」



すると風早は肩を落とした。



「ちーがーくーてー!!翔太って呼んでくれよ!!」


「…ああ。分かった、風早」


「……ちがーう!!」


ついつい風早ははぁ、と溜め息を付いた。
そんな彼を見て、またくすくすと笑い出した。



「じゃあ、そろそろ帰るね、ばいばい」



「………分かった、じゃーな」



「うん、じゃあね。また明日ね!」



「………おう。(結局名前で呼んでくれなかった……)」


風早は少し落ち込みつつ、教室から出た。
教室を出た瞬間、先に教室を出た碧亥が突然彼を大きな声で呼んだ。



「ねーッ!」


「ん?」



「翔太、好きだよ!また明日ねっ!!」


「!!!!」



可愛い君

((や、やべえ))
((また惚れ直した))





君届にハマった


Back
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ