単発×短編小説


□サービス残業の帰り道
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キィ…

「やぁ,お疲れさん。」
「っ,伸じゃないか。どうしたんだこんな遅くに。」

それまでコンピューターにがっついてプログラミングを修正していた当麻は,意外な訪問者に顔を向けた。

「んーなんとなく。それにしてもSEは大変だね。深夜に作業しなきゃいけないこともあって。」
「なに他人事みたいに言ってるんだ?」
「あぁ,僕もだった。」

セキュリティキーをちらつかせながら伸のいたずらな笑み

「そっちはどうなんだ? 異動先でうまくやれてるのか?」
「うん,まぁね。上司がいい人だし,わりとね。」
「そうか。それはよかった。」

そう言うと当麻は時計を気にしながら作業に戻る。

「これからメンテナンス?」
「いや,今日はないが来週にある。その準備というわけさ。」
「そう…。じゃぁ今週は毎晩居残るの?」
「俺は毎日じゃない。同じ人間が毎日残業すると特に最近は人事がうるさくてな。サービス残業は認めてませんってな。好きで居残ってるわけでもないんだが。」
「そんなふうにいわれてるんだ。ってことは,毎日同じ人間でなければ特に言われないってこと?」
「あぁ,退室時間の最終入力者だけを見て言っているらしい。人事の計る基準ってもんがグレーゾーンなこって…。」
「そうか。セキュリティキーでロックするから,そのIDでわかっちゃうってことか。」
「昨日と一昨日は主任だったんだが,2日連続くらいはおとがめなしのようだ。」
「へぇ,そりゃまたグレーゾーンな。」
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