快楽の楽園
□Mr.jealousy
1ページ/13ページ
三番隊副隊長の吉良イヅルは目の前にたまった書類を見て大きくため息をついた。
今日は隊長である市丸ギンの機嫌が頗る悪い。
原因はわかっている。
先程廊下で十番隊副隊長の松本乱菊が九番隊副隊長の檜佐木修兵と仲良く話しながら歩いているところを見かけたからだ。
だが、そのくらいではここまでギンの機嫌は悪くならない。
ギンの機嫌が悪いのには他にも理由があった。
ここ最近ギンは忙しい。
ギンが忙しいと言うより隊長職が忙しいのだ。
隊首会が週に三度もあったり、提出書類の締め切りが重なったり、果ては現世出張が入ったりと恋人とゆっくり過ごす時間もない。
しかしたまたま今夜思いがけず時間が取れたので、ギンは足取りも軽くその事を乱菊に伝えに言った。
「えー今夜?急に言われても困るわよ。飲み会だもん」
だがしかし彼の恋人はあっさりと彼の申し出を却下した。
「ボクと飲み会とどっちが大事なん?!」
バンっ、と机を叩いてギンは乱菊ににじりよった。
乱菊は馬鹿馬鹿しい、というような表情で
「下らないこと聞かないでよ、飲み会の方が先約なんだから仕方ないじゃない」
と机の上の資料に目を落とした。
「ボクと逢う時間はなくても九番副隊長さんと会う時間はあるんやねえ」
とギンは乱菊に絡み始めた。
「はあ?何それ、たまたま廊下で会ったから話しながら歩いてただけよ」
乱菊もバンっと机を叩いて立ち上がった。