‡気象短編:裏〜激裏‡
□そして、切なる……。
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S視点
「じゃ、翔くん帰ろっか」
「あー…うん、そうだな」
仕事が一緒の日にこうして松潤と帰るのも、気が付けば当たり前になっていた。
まぁ、あれから半年近く経つんだから当然っちゃあ当然か……。
“あの日”の後には顔を見るのすら苦痛でしかなかったのに、慣れって怖いもんだと思う。
でも未だに慣れないのは俺達が連れ立って楽屋を出て行く時の、2人の表情。
「お疲れさま」
そう言って戸口から楽屋を振り返ると、今日もまたどこか寂しそうに笑う相葉ちゃんが目に映る。
その顔を見る度に思っていた。
……なぁ、何で?
お前は俺と別れてニノと付き合えて幸せな筈だろ?
何でそんな辛そうな顔してんだよ?
幾度となく俺の中にそんな疑問が駆け巡ったけど、俺はそれを“俺に対する罪悪感”なんだろうと解釈していた。
ほんの2週間前までは。
だから相葉ちゃんがそんなもの感じなくて済むように、仕事以外では極力話さないように気を付けてたのに。
それが俺達の間のある種の均衡のようなものだと思っていたのに、今となってはそんな自分が滑稽過ぎて乾いた自嘲しか出ない。
俺は智くんの方にチラリと目を向けてから、逃げるように楽屋を出た。
悲しそうに曇るその顔を、俺は直視する事ができなかった。
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