‡気象短編:裏〜激裏‡
□胎動-Ver.MS-
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あの日を境に、元々不自然だった相葉ちゃんの態度がもっとおかしくなった。
仕事以外で俺に触れなくなった、目も合わせなくなった。
なのにいくら問い詰めても相葉ちゃんは絶対に口を割らない。
最初はどうしてだか検討も付かなくて、悲しみと戸惑いが徐々に怒りに変わり始めた頃、不意にソレを見付けてしまった。
頭の中を駆け巡る疑問。
でも、切れそうに細くなりながらも繋がっている今の相葉ちゃんとの関係を壊すのが怖くて……訊けない。
そうしてずっと訊く事が出来ないまま、今日まで来てしまった。
帰り支度を始める相葉ちゃんの首筋にチラッと目を向けると、また一つ赤い印が増えていた。
相葉ちゃんからは決して見えない死角に、
まるで俺への挑戦状のように、一つの印が薄れて消える直前にまた一つ……固有の証が増えていく。
その繰り返し。
“ねぇ、それは誰に付けられたの?”
“なぁ、お前は俺以外のその誰かに一体何回抱かれたの?”
“……もう俺の事好きじゃねぇの?”
“その誰かって、俺の知らない奴?それとも……それとも…”
失うのが怖くて、決して口には出せないまま心の中で渦巻く言葉に俺は唇を噛んだ。
「………翔くん?」
誰も居なかった筈の楽屋に、突然声が響いた。
ハッとして顔を向けると、そこには既に帰った筈の松潤が居た。
俺は意識的に表情をいつも通りの笑顔に戻す。
「あれっ?松潤、帰ったんじゃなかったの?」
「ちょっと忘れもんしちゃって」
「ふーん?携帯か何か?」
「いや?違うよ」
忘れ物と言いながら、松潤は何かを探す気配もなくじっと俺を見ている。
何だろ?
俺は小さく首を傾げて松潤を見返した。
「どうしたの?忘れ物取りに来たんだろ?」
「嘘。ほんとは翔くんが気になって戻ってきたんだよ」
「俺が?何で?」
「最近ずっとそうやって無理して笑ってんじゃん」
「ー―っ…そんな事…」
「なくないだろ?」
否定しかけた言葉を遮られて視線をさ迷わせる。
普通にしてたつもりだったのに…バレてたんだ?