‡気象短編:表〜軽裏@‡
□たどたどしい恋の始まり
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「いや…ほんと何でもないから」
流石にね、
お前のせいだろ!とは言えないよな。
何かそれじゃ俺が2週間も前の事気にしてるみたいだし。
いや、実際気にしてんだけどさ……。
「……ふ〜ん?」
こっちの考えを知ってか知らずか松潤はいかにも適当な相槌を打つと、楽しそうに笑いながら俺の隣に座ってきた。
「なぁ、ほんとは俺の事意識しちゃってんじゃねぇの?」
「な…何言ってんの?」
「この前の撮影」
「……撮影がどうかした?」
何でもないような口調で質問してくる松潤からあえて目を逸らし、新聞に目を固定したまま惚けてみせる。
でも松潤があの撮影の事を忘れたわけじゃないって分かって、何となく嬉しかったり。
でも何で“嬉しい”んだろ?
小さく首を傾げていると、松潤が俺の手から新聞を奪い取った。
「ちょっ松潤!…っ」
奪われた新聞を取り返そうとして松潤の方に顔を向けると、まともに目が合った。
しかも意外と近いしっ!
咄嗟に逸らそうとした目が無意識に下へと滑り、ふっくらとした唇で止まる。
この口が俺にキスしたわけで……って俺なに考えてんだろ。
自分に突っ込みを入れていると、目の前の唇がゆっくりと動いて言葉を発した。
「俺がキスした事、意識してんだろ?」
俺は目線だけを上げて松潤を見た。
何でだろ……頬が熱い。
黙ったまま答えない俺の頬に松潤の手が触れ、親指が唇を撫でた。
とうとう耳にまで熱を感じて、居たたまれなくなった俺は松潤の視線から逃れるように目を伏せた。
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