‡気象短編:表〜軽裏@‡

□きっかけは撮影で。
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────────…
 
 
 
 
 
 
 
「おはようございまーす」
「おはようございます」
 
 
スタジオに入ると二つの部屋に見立てたセットが用意されていた。
 
仕切りとなる壁を挟んで右側が何から何まで真っ白な調度品で揃えられた“白い部屋”
その左隣の部屋は右とは対照的に、全てが黒で統一された“黒い部屋”
 
結構凝った作りじゃん。
 
 
「あっ!松本くんに櫻井くんねっ!ごめんなさいねぇお待たせしちゃって。来てみたらもう全くセットがダメダメだったのよ〜。でも大丈夫!もうバッチリだから。えっと、あらそういえば初めましてよね?今回二人を撮らせて頂くカメラマンの藍川です。今日はよろしくね?」
 
 
カマ走りに、カマ口調。
 
まぁ珍しくはないけど。
 
にしてもこの人よく喋んな……。


「あ、こちらこそよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
 
「じゃ、早速始めましょっか。みんな〜準備して!」
 
 
藍川さんの言葉を合図に動き始めるスタッフさん達。
 
 
「まずは松本くんからね。黒い方の部屋で撮影するから、準備して頂戴」
 
「はい。よろしくお願いします」
 
 
黒い方ね……って俺の衣装も上下真っ暗なんだけど(笑)
 
“とりあえずクールにカッコ良く”って指示で何枚か撮られて、また色んな注文が加わっていく。
 
で、普通の撮影より大分時間は使ったけど思ったより普通に終了。
 
正直ちょっと拍子抜け。
 
てかこのセットの机の上、ナイフのレプリカみたいなの置いてっけどノータッチで良かったわけ?
 
何て俺の疑問はお構い無しに藍川さんは、
 
 
「はーい、じゃあ次櫻井くん白い方に入ってね。自然に可愛く動いてくれればいいから。イメージは“純粋”ね」


と言いながら、うふふと笑った。
 
いやいや可愛く純粋にって変だろ。
 
翔くん明らかに困ってんじゃん(笑)
 
 
「翔くん頑張ってね?」
 
「笑ってんじゃねぇよ。他人事だと思ってさ」
 
 
なんて口を尖らせながら“白い部屋”でスタンバイする翔くんは、俺の衣装とは正反対で上下とも真っ白だ。
 
スタッフの子に「同化しない?」って聞いたら映像処理で俺の服の輪郭には赤い光、翔くんの服の輪郭には淡い黄色の光を使って区別するんだって。
 
なるほど
色々考えてるわけね。
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