‡気象短編:表〜軽裏@‡
□天使な小悪魔
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M視点
6時間目開始のチャイムが校内全体に鳴り響き、休憩時間の終わりを告げる。
この時間になるとさすがに此処にサボりにくる生徒もいない……つーかサボりに来るくらいならもう帰ってんだろ、時間的に。
さて……と、
「そろそろ起こすとすっかな……」
白いカーテンをサッと引くと5つ並ぶベッドの1つだけがこんもりと盛り上がっている。
穏やかな寝息を立てて眠っている櫻井の顔を覗き込むと、その頬はまだ少し赤みを帯びていた。
「まぁそう簡単に熱下がるわけねぇよな……」
前髪を避けて額に触れるとやっぱり熱い。
「…ん……」
僅かに身動いだ櫻井の口が薄く開く。
長い睫毛にぽってりした唇。
学園のアイドルとも称される、生徒達の愛すべき副会長様。
間近で見たのは初めてだけど、確かにそそる顔してんじゃん?
って生徒に欲情してどーすんだって話だよな。
「………おい、櫻井起きろ」
呼び掛けてみても熟睡してるのかピクリとも動かない。
「おーい…?」
軽く頬をペシペシと叩いてみると、少し眉間にシワを寄せて寝返りを打ちかけたから起きるのかと思ったら……また規則正しい寝息が聞こえ始める。
ってオイ。
「櫻井、お前マジでいい加減……」
“起きろ”と言う前に、頬に添えたままにしていた手に擦り寄るようにして櫻井が身動いだ。
浅く繰り返される呼吸が手のひらから直に伝わると、俺の中で得体の知れない欲求が膨れ上がった。
バカな奴。
仮にも生徒だからさ、変な気起こす前にさっさと家に返してやろうと思ってたのに。
ま、珍しく欲求不満中な俺の前でそんな無防備な姿晒す方が悪いんだし?
「自業自得ってことで……」