‡気象短編:表〜軽裏@‡
□たどたどしい恋の始まり
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S視点
松潤に、キスされた。
しかもあんな公衆の面前で…っていうか撮影中に。
百歩譲ってカメラマンからの要望ならまだしも、そんな指示は一っっ言だって出てねぇのに。
マジでありえないし。
とにかくあの日は頭ん中が相当混乱してて何も考えらんなくて、後から楽屋に入って来た松潤が何か言ってたみたいだけど、無視するみたいにして逃げるように楽屋を飛び出した。
それが約2週間前のこと。
で、今日は雑誌のインタビューでただ今楽屋待機中なわけだけど、運悪く今日の仕事はまた松潤と2人きり。
個人の仕事が立て込んでたのもあって松潤と会うのはあの一件以来だから……今マジ気まずいんですけどっ!
沈黙した部屋の中、新聞を捲りこっそりと松潤を盗み見る。
視線の先では松潤がイヤホンを耳に付け音楽を聞きながら小説を読んでいた。
じっと見てても特に不自然なところは見当たらなくて自然と眉が寄る。
もしかしてあの撮影を引き摺って悩んでんのって俺だけなわけ?
松潤にとってはただのノリでやった冗談で、そんな事もう忘れちゃってるとか?
いやいやソレ自分勝手すぎねぇ?
ってかよく考えたら俺が気にし過ぎてんのか?
たかがメンバーとのキスくらいで。
そういやニノとさとっさんだってよくふざけてやってるもんな……。
って事はやっぱ俺が意識し過ぎてんの?
あれ?じゃあそもそも俺何でこんな意識してんだろ?
わっかんねぇ〜……。
首の後ろを掻きながらため息を吐き出すと、楽屋にクスクスと笑い声が響いた。
「翔くんさっきからどうしたの?」
「どうしたってお前……いや………何でもない、うん」
歯切れ悪く言う俺を見て、松潤はイヤホンを外しながら首を傾げた。
「何でもないって事ないと思うけど。翔くん来た時からずっと変だったよ?」