企画物

□溢れかえる君への想い
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一読しておいた方がいいかもしれません、オレブン事情
下スクロールで、本編です。









昼休み、屋上。俺と晋太郎は一緒にお弁当を食べるのが日課だ。
俺は春の陽気に誘われてうとうと眠りに入ってしまった。

高「……―んぱい、楠木先輩、昌成、起きて」
楠「ん……何……暖かくなったね」
高「何寝ぼけたこと言ってるんですか、予鈴鳴りましたよ」
楠「いやぁぽかぽかした陽気についつい」

俺がそう言うと、晋太郎は、はぁ、というため息と微笑みを返した。そのあとに、軽く俺の頬に唇を当てるのが陽気な時間が終了する合図。
軽いキスなのに顔を真っ赤にして恥じらう晋太郎が可愛くて鼻血出そうになるのを我慢する。

高「授業遅れますよ」
楠「このまま俺と保健体いッ…ってッ!!…」
高「冗談もほどほどにして下さいよ」

地面に置いていた手をおもいっきり踏まれて俺は咄嗟に悲鳴をあげた。まぁこれも照れ隠しだろって話。
すたすた一人で階段に繋がる扉に歩いて行っちゃったけど、途中で弁当箱置き忘れてるのに気付いてまた顔を真っ赤にして取りに帰ってきた。
あぁそんなお前も可愛い、なんて考えていたら鼻血出そうになるから手で鼻を押さえる。高杉が踵を返した後指の間から赤い筋ができたことは、まぁ気にするな。


☆★☆★☆


教室に戻ると、真っ先に満面の笑みで雷鳴が出迎えた。大方冷泉に何か誉めてもらったんだろうなと予測。本鈴が鳴り始め、雷鳴は仏頂面になって席に戻っていった。
俺は、ふと窓の外を見つめる。視界に入るのは本校舎。

嗚呼、晋太郎はあそこで勉強しているのか。

今すぐにでも授業を抜け出して会いに行きたい。
そんなことしたら晋太郎は、恥ずかしがりながら怒って「馬鹿」の一言を俺に送るだろう。だいたいテスト直前に授業邪魔しに行ったら教師に怒られるどころじゃない。
そんなとき席が離れている雷鳴が目の前に現れた。

楠「あれ?雷鳴どうした?」
雷「テスト前だから自習だってさ!授業聞いてなかったのか?お前にしては珍しいな」
楠「あぁ、そうか」

授業なんて全然聞いてなくて気付かなかった。皆自習となって立ち歩いたり外に出たりしている。
自習なら外出ていいんじゃないか?

楠「雷鳴、自習なら外出ていいかな」
雷「いやダメだろ」
楠「やっぱりそうだよな」
雷「昌成どうした?熱でもあんのか?さっきからおかしいぞお前」
楠「春の陽気にやられたんじゃないかな」

雷鳴はケラケラ笑っていたが、本当は晋太郎が気になって仕方なかったなんて言ったらどんなリアクションをとるんだろうか、そんなことを考えながらまったく進んでいない雷鳴の勉強を手伝った。


☆★☆★☆


放課後、やけに荷物が軽いと思い今日は部活がないことに気付く。
晋太郎に会えないな。
そう思いつつも本校舎に足を運んでいる俺は何なんだ。きっと俺が会いに行ったら晋太郎は、まるでゴミを見るような目をしながら俺にジャッジスルーをかますだろう。

二年生のフロアに立ち入ると、もう終礼が終わったようで、廊下で紫電に目潰し食らわせていた晋太郎がいた。人様に何してんだあの子は。
人の流れに邪魔にならない場所でぽつんと立っていた俺に晋太郎が気付いたようで、目潰しに悶えている紫電そっちのけで俺に手を振ってきた。そのあと、晋太郎から俺に寄ってきた。そして目の前に晋太郎のバッグから出されるお揃いの袋に入った弁当箱。

高「先輩先輩、これ、お弁当箱」
楠「ん?俺持ってるぞ?」
高「取り間違えた」
楠「そ、そうか」

わたわたしながら俺はバッグから取り間違えたお弁当箱を出した。

高「…すんません」
楠「べつにいいよ晋太郎」

優しく頭を叩いてやると晋太郎は珍しくにへらと笑った。それに、どこか嬉々としているようにも見えた。俺に対しては、人前は愚か二人きりのときですら見せない笑顔を浮かべて弁当箱をバッグにしまった。
デレ期かな、なんてことを考えていたら鼻の下に生温かいものが垂れるような感触、そのあとに唇の隙間から口に生温かいものが入り口の中に鉄の味が広がる。おお、これは……

高「せっ、先輩鼻血っ!!」
楠「どうってことないだろ」
高「ありますよ!!制服汚れちゃいますし、ほらティッシュ」
楠「ん、ありがとう」

晋太郎からティッシュを受け取って鼻血を拭く。晋太郎が可愛い所為だなんて言ったらまた怒られるから言わないでおこうか。
晋太郎と俺と、お互いに帰る約束があったため一緒に帰れなかったのだが、別れ際に晋太郎はそっと小言で俺に囁いた。

高「昼寝したり鼻血出したりするのは俺の前だけって、嬉しいですよ」

晋太郎は顔を真っ赤にさせて闇野たちの輪に戻っていった。
ああ、さっきからニコニコしていたのはだからか、昔から俺は世話する側ばっかりだったからな。心が許せる存在ていうかなんというか、とりあえず可愛いぞ晋太郎。

ツーッとまた鼻血が垂れた。
でもこれはただの鼻血じゃなくて、溢れかえる君への想いなんだ。



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