頂き物
□銀高3
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「晋助ー!!遊びに来たぜよ〜!!」
鬼兵隊の船の中にその能天気な声が響いた。
「…五月蝿い」
高杉は襖を全開にし至近距離で叫ぶ辰馬に言った。
「あっはっは!うるさいなんてひどいのぅ!」
辰馬は、自分の荷物をガサガサとあさりだし、お目当ての物を見つけたのか、ひょいと手を差し出した。
「今日は晋助に土産を持ってきたんぜよ」
手の中には何やら飴のような形状の包みが握られている。
…嫌な予感しかしない。
「ほれ、食ってみい」
「…絶対やだ」
この前、天人のお酒を飲んでしまい猫になったばっかりだ。
明らかに怪しいピンクの包みが明らかに怪しいモジャモジャの手の中にあるのだ。
それを自分から食べるやつなんて、よっぽどの馬鹿か世間知らずだ。
高杉に世間知らずなどとは、死んでも言われたくはないが、とにかく高杉はその物体を拒絶した。
辰馬はなんでじゃーと文句を垂れながら食い下がる。
それを無視し続け、煙管を口にした所で、高杉はいいことを思いつき辰馬に言った。
「それ、何かは知らねぇが銀時に食わせてみねぇか?」
高杉はニヤリと笑うと、それでも楽しそうだと辰馬も頷いた。
…やっぱりなんか、入ってんじゃねぇか。
そうと決まれば高杉と辰馬は早速、万事屋に足を運んだ。
チャイムの切れた玄関前に到着して、高杉が扉をバンバン叩く。
「銀時ー!!どうせいるんだろー!!開けろーぃ」
「あっはっは、家賃の取り立てじゃないぜよー」
5分くらいバンバンバンバン叩きまくると、ガラリと勢いよく扉が開いた。
「昼間からなんなんですかー!?バンバンバンバン近所迷惑だから!!金ならね…!?」
そこでようやく、来客の顔を確認した銀時は、そこにいる二人組を見て絶句した。
…なんで辰馬と高杉が二人並んで、こんなところにいるんだ?
まさに、開いた口が塞がらない状態で二人を眺めていると、高杉が思い出したように包みを開き、中の物体を銀時の口の中に放り込んだ。
「!?」
いきなり口の中に入ってきたものを反射的に出そうとした。
が、高杉に口を手で押さえられてしまい、吐き出そうとした勢いのまま、逆流してきて、飲んでしまう。
「…ッ!!ゲホッ!!なんだこれ!!」
銀時は顔をしかめる。なんとも表現のしようがない味が口いっぱいに広がっている。
この味をずっと舌で味わうぐらいなら飲み込めてよかったと思うほど、素晴らしく不味い。
途端、胃の辺りに急激な熱がはしり、その場に倒れそうになった。
高杉は驚き銀時を支える。そして、辰馬を睨んだ。
「…お前、こんなもん俺に飲ませようとしてたのか」
「晋ちゃーん、その台詞そっくりそのままお前に返していーい?」
「あっはっは!!大丈夫ぜよ!」
「「なっんも大丈夫じゃねーから」」
「……銀時?」
急に支えていた銀時の体重が軽くなる。心なしか声も高く聞こえた。
高杉は辰馬から銀時へと目線をやると、そこには松下村塾で毎日の様に見ていた、小さいだるそうな目をした少年がいた。
「どわぁぁぁぁあ!?」
銀時も自分の体の異変に気が付いたのか、大声で叫ぶ。
高杉はその可愛らしい姿に、釘付けだった。
「…高杉?」
ぼぉっと銀時を眺めていたら訝しげな顔で銀時に名前を呼ばれた。
「な…ななななんでもねーよ!?とりあえず、中に入ろうぜ!?」
首を傾げてだぼだぼの服からこちらを覗く銀時に、ヤバイほどときめいた。
「いやー、銀時めんこいのぅ!!」
そうそれだ!と高杉が思った瞬間、辰馬は子銀に蹴られた。
「…仕方ねーな、入れ」
憎たらしくそういう銀時のその姿すら半端なく可愛くて、高杉は返事をしながらも笑わぬよう口を押さえた。