頂き物

□3Z銀高2
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ピピピピッ
ピピピピッ

朝。セットしておいた、携帯のアラームの無機質な音が辺りに響いた。
そのアラームが鳴り出して数秒後、俺はベッドから、片手を出して携帯を取ろうと手を伸ばした。

…取れない。

確かに、手に携帯を握ったはず…いや、握ろうとしたが握れない。

そもそも、携帯ってこんなに手に余る程、大きくなくね?

疑問に思い、ダルくて目を開いていなかった高杉晋助は仕方なくゆっくりと体を起こし、目を開いた。


……嗚呼、俺は夢を見てるんだ。そうに決まってる。


じゃなきゃおかしいだろ?


ベッドの近くにある鏡を高杉は凝視した。
そこには、片目に眼帯をつけた、紫がかかった真っ黒の毛を持つ一匹の猫がベッドの上にいた。


…人間が猫になるなんて。


「うにゃぁぁあぁああ!?」
『なんだこれぇぇぇえ!?』

何で猫に!?
えっ!?夢だよね!?
高杉は、自分の頬…というか、ひげを猫の手で器用に引っ張った。

『………ッ!いたっ』

…夢じゃない…?
もう一度、鏡を見てみる。なにも変わっていない。やはり黒猫が一匹いるだけだ。

マジかよ。確かに痛かった。夢なら痛くないっていうよな…。
落ち着け。落ち着くんだ、俺!!
そうだ、まず落ち着いて考えよう。

昨日、寝る前に何かしたか。
なんか、変なものでも口にしたか。
変な行動をとったか。

高杉は、じっくりと昨日の行動を振り返ってみた。

…昨日はまず、いつもの様に起きたよな…。11時頃に。
んで、学校行って、屋上でサボって、昼食って。 土方達と話して、辰馬にからかわれて。
で、銀八と3時にお茶飲んだ。




………………あっ。
もしかして…あの時の…?

ーin国語準備室

いつもの様に3時頃に、国語準備室に銀八の煎れたお茶を飲みに来ていた。ふと、銀八の机の上に、可愛らしい包み紙にくるまれた飴らしきお菓子がポツリと置いてあるのを見付けた。

「銀八ぃ、なんだこの包み?」
「ん〜?気になるなら食べてごらん」
「おぅ」

その時、銀八は口の端を釣り上げニヤリと笑った。
だが特に気にせず、その包みを開け、口に入れ、少し口の中で転がす。

「…苺の飴だな」
「うまいか?」
「あぁまぁ、普通の飴だ」「そりゃ、よかった」
「うん」

「…明日が楽しみだ」
「?なんか言ったか?」

「えっ?気のせいじゃない?」

そう言うと銀八はにっこり笑った。


−…
『銀八ぃぃいぃぃいい』

高杉は大声で鳴いた。
犯人はぜってぇあいつだ、あのクソ天パぁぁああぁぁぁああ!!

何かわからないものを口に入れた高杉にも充分過失はあるが、とりあえず高杉は、何をしなければいけないか理解した。

残念なことに、携帯に銀八の番号は入っていない。

仕方ねぇ…。
待ってろよ、銀八ぃ。
すぐに、殴りにいってやらぁ。


高杉は猫の姿のまま、四本の足を使ってマンションを飛び出した。





『はぁ…着いた…!!』

15分くらいだろうか。高杉は猫の姿で全力疾走した。いつもより、幅の広く見える道に、大きく見える人間。
本当に自分は猫になっているんだなぁと実感してしまった。

『くそっ、あのやろっ…うおっ!?』

急に体がふわりと地面から離れた。驚き足をばたつかせる。

「…なんで、こんなとこに猫がいるんだ?」
「しかも、この猫、眼帯つけてますぜ?変な猫ですねぃ」
『土方!沖田!』
「おっ、鳴いた」
「へぇー、いい声だ」
『…!!離せぇぇえ!!』

高杉は沖田がニヤリと笑ったのを見逃さなかった。なにより、猫になっているとはいえ、同級生の土方に持ち上げられてるのは気に食わない。

ガブッ

「いっでっ…!!」
「よくやった、猫!!」
「てめっ…」

思いきり牙をたて土方の手に噛みついた。痛みで土方の顔が歪み俺を持っている腕の力が緩む。
その隙に高杉は土方の腕の中から飛び降りた。

『すまねぇな、んじゃ先を急ぐんで』

どうせ伝わるはずがないと思ったが、伝言を残し俺は校舎へと走った。



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