頂き物

□3Z銀高2
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「いってぇなんだよ、あの猫!!野良か!?」
「綺麗な毛並みだったし、ありゃ誰かの飼い猫ですぜ、きっと」
「……銀八のじゃね?」
「……俺もそう思ってたところでさぁ」

あの眼帯に紫がかった真っ黒の毛。なによりあの目付き。

「高杉さん…お気の毒に」
「全くだ」

二人は猫の後ろ姿に哀れみの視線を向けた。

伝わるはずのないと思われた伝言は、しっかりと二人に届いていたのだった。


校舎に入り、高杉は国語準備室を目指して爆走した。
『…猫だと、この学校でも広いんだな』

途中、女子に声をかけられたり、教師が驚きの声をあげたが、そんなもんにいちいち構っていられない。 とにかく、全力で国準を目指す。

この調子で行けば、すぐにつける!!そう思った矢先…。
…嘘だろ…。

廊下の前方。桂がまたあの変な生き物を連れて、ゆっくりと此方に向かって歩いている。
桂と言えば、大の肉球好きで地味に有名だ。
…もし、捕まったら…!!

ヤバイキモい逃げなきゃ!! だが、この廊下は国準への最短ルートだ。
桂さえ逃げ切ればすぐに、銀八を殴りにいける!!
…どうする!?

「エリザベス、今日もいい天気だ…むっ!?」
[どうしました?桂さん]『やべぇ…!!気付かれたか!?』
「見ろっ!!あそこ!!猫だ!!」
『ちくしょう…!!』

一貫の終わりだと、思った瞬間。桂は窓からグランドへと飛び降りた。

「肉球ぅぅうぅう!!」
[桂さん待ってください]

続いてあの生き物も飛び降りる。

『…?』

ここ、二階なんですけど。

どうやら、桂はグランドに紛れ込んできた猫に反応し飛び降りたらしい。なんという、いいタイミングだろう。
ありがとう、名も知らない猫!!

桂に肉球を触られる想像をしていた高杉は生まれて初めて心の底から猫に感謝したのだった。


『…ついた!!』

高杉はとうとう目的の場所、国語準備室の前にいた。なんという長い道のりだったことか…!!

あの後も、神楽に捕まりそうになったり、妙が投げたゴリラがぶつかりそうになったり、定春に追いかけられたりと本当に大変な目にあった。

…それもこれも全部、あの天パのせいだ。

さて、扉を開けようと手を出した。そして気付いた。猫の手では、学校の重い扉を開けられないことに。

マンションのドアはドアノブを回せばあとは体重で開いた。だが、学校の扉は全て、引戸になっている。
体重をかけたところで、一ミリだって動かない。

『ここまできたのにっ!!』

高杉は、国準の扉の前で力なく項垂れた。くそっ、銀八はもう目の前なのに…!!

と、ヒョイと後ろから抱き上げられた。

「よく来たね晋ちゃんVv」
『銀八…!!』
「あはは、本当に猫になっブベラッ!!」

高杉は精一杯両足を伸ばして、銀八の頬を思いきり蹴った。勿論、爪をたてることを忘れはしない。

「い…ッ〜!!何すんだ、高杉!!血ぃ出たじゃねぇか!!」
『何すんだは、此方の台詞だぁあ!!変な飴舐めさせやがってぇぇえ!!』
「銀さん舐めろなんて、一言も言ってないよ?」
『でも、止めもしなかったろうがっ…って、えっ、何言ってんのかわかるのか…?』
「ん〜、愛の力?」
『…キモい』
「おいおい、そんなこと言ってるとぉ」

銀八はニヤリと笑うと何処から出したのか手に赤色の首輪を持っていた。

「つけちゃうよ?」
『…!!元々、つける気満々じゃねぇか!!』
「まぁな〓」
『くそっ、離せっ!!』
「何言ってるかわかんないや☆」
『愛の力はどうしたぁぁあ!!ちょっ…マジやだ!!』
「はいはい、とりあえず入ろうね?」
『…!!』

銀八は静かに国語準備室の扉を開いた。


うぅ…。目的通りに銀八をぶん殴れたのはよかったが、この状況は、今までの比ではないくらいヤバイ状況だろう。

高杉は、国語準備室に入った後、なんとか銀八の隙をついて逃げられるギリギリまで逃げた。だが、とうとう壁に背中がついてしまっていた。

「全く、引っ掻いたり噛んだり危ないでしょ!なにも、襲うわけじゃないよ?だだ、ちょっとこの首輪をつけてくれれば…」
『だから、誰がそんなもん好き好んでつけるんだよ!!』
「…高杉?」
『お前の目は節穴かぁぁあ!!』

すると、銀八は残念そうな顔をして言った。

「そっか。もう、人間の高杉とは会えないんだ」
『……はっ?』
「つけてくれれば、戻る方法教えてあげるのに…」
『!!』

此処に来てそんな交換条件をだしてくるとは流石ドSと言ったところだろう。
もう猫は嫌だ…でも、首輪をつけるなんてっ…!!

「どうする?猫のままがいい?戻りたい?」

ニッコリ笑って銀八は言った。

『戻りたい…!!』
「うん、だから?」

わかるよね?優しく笑う目が高杉にそう問いかけていた。

『…ッ!!お…俺にっ…』
「うん」
『…く…首輪を…!!』
「はっきり言ってくれなきゃわかんないよ?」
『首輪をつけてください!!』
「良くできました」


首に変な違和感がある。ペットの様に、銀八に拘束されていると思うと、羞恥で消えたくなった。

そんな高杉を銀八は嬉しそうに撫でている。

『ほらっ、早く戻る方法教えろよっ…!!』
「ん?そんなの元からねーよ」
『…はっ?』

銀八はまたニッコリと笑った。

「その薬、時間がたてば効力きれてもとに戻るように出来てるからな」
『…………。』
「そろそろ効力きれる頃じゃないかなぁ?」

そう銀八が言った瞬間、高杉は、元の体に戻っていた。

「…銀八ぃ、てめぇ騙したな…!!」
「いやいや、戻る方法教えてあげたんだから、嘘なんてついてねーよ」
「うるせぇ!!殺す!!」
「だめだよ、晋ちゃん。その格好でどんなに凄んだって全然怖くないもん」
「…えっ?」

そう言われて改めて自分の格好を見てみる。
……全裸に首輪。

「……ッ!!!??」
「それで、何言われても誘われてるようにしか聞こえないよ?」
「うわぁぁあぁああ!!」
「さっ、折角戻ったんだし、一発いきますか」
「ぎ…銀八の変態!!!!」
「あれ?今更気付いたの?」
「……ッ!!死ねっ!!」
「はいはいVv」


その後は言うまでもなく、高杉の喘ぎ声が国語準備室に響いた。


終わり
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