同人小説

□学生パロディ。
2ページ/16ページ

正月ふたり














「ジェイドー…何か寮が寒いんだけど。」

「おや、ユーリ居たんですか」

古くて壁が薄いこの寮は、下の階の住人が気を遣わずに玄関を開け閉めすれば上に響く。

ユーリが来るのを待っていた様に鍵を開けて、ジェイドはお茶の準備をしていた。

「居たんですかって、ジェイドこそ正月帰らないのかよ」

言いながらユーリはサンダルを脱ぎ、勝手に上がり込んでテーブルについて適当に寛ぐ。

「色々面倒なんですよ。片方だけ顔を出す訳にいきませんし」

「お前金持ちの養子つったっけ。確かに面倒臭そうだな」

「ユーリこそ、帰らないんです

紅茶と、ジンジャークッキーが乗せられた白いトレイがテーブルに置かれた。

「…正月だぞ、一応」

「クリスマスの残りです。消費してくれる方がいて助かります」

残り物の片付けを期待する、有無を云わせぬ笑み。

「まあ、ここに来て雑煮出されても引くけどな…」

雪だるまの様な形をしたクッキーを一つ摘んで口に放り込んだ。
生姜が効いているそれはピリっと辛い。

テレビの音も飾りも無い、この部屋の雰囲気は正月とはほど遠かった。

「コンビニにでも買いに行きますか?皆さん帰省して食堂も閉鎖してますからね」

ユーリの向かいに座り、ジェイドもクッキーを一つ摘む。

「マジか!聞いてねーよ」

「寮の掲示板を確認なさい。たま〜に、いいこと書いてますよ」

適当な連絡網に不慣れな一年生を笑って紅茶を一口。

「どうりで寒い訳だ。暖房ついてんのこの部屋くらいかもな」

持ち込みの静かなエアコンと、お気に入りらしいホットカーペットでこの部屋はいつも快適だ。

「ま、毎年のことです。何もありませんが、居るなら構いませんよ」

「ん、サンキュ」

初めてユーリがジェイドの部屋に来た理由は、水道がぶっ壊れた、からだった。

後日水道は直ったのだが、殆ど物の無いジェイドの部屋が何故か気に入ったらしく、よく訪れる様になった。

ジェイドにしてもユーリは不思議と邪魔にならないので、したいようにさせている。

ジェイドを知る人間はこの現象を知ると一様に首を傾げるのだがー…

「テレビつけてもいいですよ、少しは正月気分を味わえるでしょう」

ジェイドはマガジンラックから読みかけの本を取り出し、ホットカーペットの上にうつ伏せた。

「あんたそういう煩いの嫌いだろ。」

「ええ、嫌いですよ」

ころん、と猫の様に仰向け、本から目も離さずしれっと言い放つ。

「…本当可愛いよな、センパイ」

寄って来た、と思えば見ていた本を頭上に上げられ、何か?と見上げると本のあった位置にユーリの顔があって

長い髪を揺らして唇が唇に落とされた。

「…ん」

唇は軽く触れ、すっと離れた。

「…何するんですか」

「いや、可愛いと思って」

至近距離で囁くユーリを目を細めて睨むジェイドに、悪びれもせず答える。

「年上の、しかも男に向かって何言ってるんですか」

「大人っぽい、とか美人、のがいいか?」

「表現の問題では…」

言葉の途中でユーリの顔が近づいて来て、ジェイドは思わず目を閉じた。

同じく閉ざした唇にユーリの舌先が這う。
形をなぞる様に数度行き来させると、頭上でパタリと本が落ちる音がした

「…やっぱり、可愛いがいいと思うぜ、センパイ」

「ユーリ…っん」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべた後輩の、名を呼んで開いた唇の間に舌が割り込んで来た

「ん…っう…」

前髪を掻きあげる様にそっと差し入れられた片手で上向かされ、ユーリの舌はジェイドの口内の奥深くまでを貪る

「ん…んっ」

唾液が口の端を伝う。
互いのそれを吸い取り音を立てると、ようやくユーリの唇が離れた
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ