同人小説
□IJADE@
2ページ/23ページ
HOLD ME
「ジェイドさん、あなた宛てに小包が届いてるわよ」
パニールが小さな包みを抱えて飛んできた。
「私に?」
受け取ると、手のひらにのるくらいの白い箱に……見慣れた印。
「少し重たいわね、一体何が入っているのかしら?」
パニールは中身の想像がついた様で、顔に手を寄せフフっと笑い、またパタパタと羽音を立てて飛んでいった。
「珍しく書類の類じゃないんだな」
傍らにいたルークがひょいと覗き込むので、ジェイドは指で印だけ隠した。
「同時に書類も届いている筈ですよ。科学部屋に置くようにしてもらっているので」
「そっか。じゃ、それは何?」
「個人的に頼んだ部品関係でしょうか。危険物だと困るので、科学部屋で開けてみますよ」
そう言って、ジェイドはさっさと部屋を出て行った。
「見せてくれてもいいのになあ」
ちょっと不満気なルークを、ガイが宥める。
「小包爆弾、なんてことも大佐宛なら有り得るぜ?」
「じゃあ、余計」
「だから、危険物取扱所で開けるんだろ。俺が手伝ってくるわ」
そう言い残し、ガイはさっとジェイドの後を追うのだった。
そうして、しかしジェイドの向かった先は船の甲板だった。
隠した指の下には彼の仕える幼なじみの印。
「全く…こんなところに居るのに、ちょっかい出さないでほしいですね」
「やっぱ陛下か」
ガイなりに気配を消して近づいたつもりだが、やはりバレていたらしく、思い切り(胡散臭い)笑顔で振り向かれた。
「これはこれはガイじゃないですか〜。どうしたんですか?こんな所で」
ああ分かってるよ。出し抜けるなんて思っちゃいないさ。
「旦那こそ、そんな危険物持って船を爆破する気か?」
「いやですねえ、私がそんな危険なことをする人間だと?」
思うけどさ
絶対言えないが。
「…開けてくれよ、俺も見たいんだ」
亜麻色の髪が、海風になびいている。
綺麗だ、と思った。
ジェイドなら断る理由はいくらでも考えつくだろうが、それは「彼」への気持ちを肯定する証になる。
ガキっぽいが、要は好きだから見せたくないんだろ―。と言える。
「…爆発しても知りませんよ?ガイラルディア」
たいして観念した様子も諦めた表情も見せずに、ジェイドは包みを解いた。
小さな箱に収まっていた、それはシルバーのブレスレット。
柔らかい発色が、それを純銀だと物語る。
女物らしい、細い造りのそれを、ジェイドは摘んで弄ぶ。
「シルバーのチェーンに、クロスのチャームですか…ネクロマンサーを殺す気ですかねえ?」
「そこまで考えねぇって…裏っ側にブルーダイヤついてるだろ。御守りだよ」
クロスの裏側を返して見せると、少しだけ驚いたような顔をした。
華奢なブレスが風邪に揺れる。
やがて、ため息をつくとジェイドは左手を俺に差し出した。
「後で何言われるか、想像つきますからね」
「俺につけろって?」
「生憎こういうものを装備したことがないもので」
確かに、自分ではし辛いよな。全く女ってのは器用だ。…ーしかし、この留め具は…?
「旦那、言いにくいんだが…」
「どうしました?ガイ」
恥ずかしいから早くやってくれと、ジェイドが多少焦ってるのが分かる。
その白い細い手首にーこれをー俺は躊躇するしかなかった。
「…ガイ?」
「旦那、これ、一度つけたら外れないぜ」
「……は?」
「この留め具の部分、両方に穴空いてるだろ。ここに先端を差すと、こう、ロックされる。で、この穴の構造を見ると…」
俺の説明に、ジェイドの表情が、一瞬引きつった、気がする。
あの馬鹿陛下
って思ってんのかな。
俺も説明してて何だかすごく切ないんだが。
「簡単に言うと」
「あちらが鍵を持っている、ということですね」
さすがジェイドだ。みな迄言わずに通じた良かった。
そして、差し出された左手がちょっと引っこんだ。
「……どうする?」
ジェイドは表情を現さないまま、しばらくブレスを見つめ―
ああ、悔しいな。これは恥かしいんだ。
いや何だって、俺がこんなラブシーンに突き合わされるんだよ。
俺は無言でジェイドの手をとり、計ったように長さぴったりのブレスレットで
鍵をかけた。
小さな金属音がして、チャチな枷は確かに繋がれた。
「…ガイ〜私は」
何だよ。分かってるよ。分かってんだろ?恨み言も聞きますよ。
ーただー
「俺なら、そんな鍵二分で壊せるぜ」
睨まれているのは分かっているので、振り向きもせず走ってやった。
追いかけては来ないのも知ってるけど。