同人小説

□IJADE@
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HOLD ME




「ジェイドさん、あなた宛てに小包が届いてるわよ」

パニールが小さな包みを抱えて飛んできた。

「私に?」

受け取ると、手のひらにのるくらいの白い箱に……見慣れた印。

「少し重たいわね、一体何が入っているのかしら?」

パニールは中身の想像がついた様で、顔に手を寄せフフっと笑い、またパタパタと羽音を立てて飛んでいった。

「珍しく書類の類じゃないんだな」

傍らにいたルークがひょいと覗き込むので、ジェイドは指で印だけ隠した。

「同時に書類も届いている筈ですよ。科学部屋に置くようにしてもらっているので」

「そっか。じゃ、それは何?」

「個人的に頼んだ部品関係でしょうか。危険物だと困るので、科学部屋で開けてみますよ」

そう言って、ジェイドはさっさと部屋を出て行った。

「見せてくれてもいいのになあ」

ちょっと不満気なルークを、ガイが宥める。

「小包爆弾、なんてことも大佐宛なら有り得るぜ?」

「じゃあ、余計」
「だから、危険物取扱所で開けるんだろ。俺が手伝ってくるわ」

そう言い残し、ガイはさっとジェイドの後を追うのだった。


そうして、しかしジェイドの向かった先は船の甲板だった。
隠した指の下には彼の仕える幼なじみの印。

「全く…こんなところに居るのに、ちょっかい出さないでほしいですね」

「やっぱ陛下か」

ガイなりに気配を消して近づいたつもりだが、やはりバレていたらしく、思い切り(胡散臭い)笑顔で振り向かれた。

「これはこれはガイじゃないですか〜。どうしたんですか?こんな所で」

ああ分かってるよ。出し抜けるなんて思っちゃいないさ。

「旦那こそ、そんな危険物持って船を爆破する気か?」

「いやですねえ、私がそんな危険なことをする人間だと?」

思うけどさ
絶対言えないが。

「…開けてくれよ、俺も見たいんだ」

亜麻色の髪が、海風になびいている。
綺麗だ、と思った。

ジェイドなら断る理由はいくらでも考えつくだろうが、それは「彼」への気持ちを肯定する証になる。

ガキっぽいが、要は好きだから見せたくないんだろ―。と言える。

「…爆発しても知りませんよ?ガイラルディア」

たいして観念した様子も諦めた表情も見せずに、ジェイドは包みを解いた。

小さな箱に収まっていた、それはシルバーのブレスレット。
柔らかい発色が、それを純銀だと物語る。

女物らしい、細い造りのそれを、ジェイドは摘んで弄ぶ。

「シルバーのチェーンに、クロスのチャームですか…ネクロマンサーを殺す気ですかねえ?」

「そこまで考えねぇって…裏っ側にブルーダイヤついてるだろ。御守りだよ」

クロスの裏側を返して見せると、少しだけ驚いたような顔をした。
華奢なブレスが風邪に揺れる。

やがて、ため息をつくとジェイドは左手を俺に差し出した。

「後で何言われるか、想像つきますからね」

「俺につけろって?」

「生憎こういうものを装備したことがないもので」

確かに、自分ではし辛いよな。全く女ってのは器用だ。…ーしかし、この留め具は…?

「旦那、言いにくいんだが…」

「どうしました?ガイ」

恥ずかしいから早くやってくれと、ジェイドが多少焦ってるのが分かる。
その白い細い手首にーこれをー俺は躊躇するしかなかった。

「…ガイ?」

「旦那、これ、一度つけたら外れないぜ」

「……は?」
「この留め具の部分、両方に穴空いてるだろ。ここに先端を差すと、こう、ロックされる。で、この穴の構造を見ると…」

俺の説明に、ジェイドの表情が、一瞬引きつった、気がする。

あの馬鹿陛下

って思ってんのかな。
俺も説明してて何だかすごく切ないんだが。

「簡単に言うと」
「あちらが鍵を持っている、ということですね」

さすがジェイドだ。みな迄言わずに通じた良かった。
そして、差し出された左手がちょっと引っこんだ。

「……どうする?」

ジェイドは表情を現さないまま、しばらくブレスを見つめ―

ああ、悔しいな。これは恥かしいんだ。
いや何だって、俺がこんなラブシーンに突き合わされるんだよ。

俺は無言でジェイドの手をとり、計ったように長さぴったりのブレスレットで

鍵をかけた。

小さな金属音がして、チャチな枷は確かに繋がれた。

「…ガイ〜私は」

何だよ。分かってるよ。分かってんだろ?恨み言も聞きますよ。

ーただー

「俺なら、そんな鍵二分で壊せるぜ」

睨まれているのは分かっているので、振り向きもせず走ってやった。

追いかけては来ないのも知ってるけど。
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