捧げもの

□捧げもの
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からだ






控えめなノックにドアを開けると、その訪問者が予想外で驚いた。
いつもはもっと、豪快なノックで訪れるその人は…

「トウガ君?」

どこか気まずそうで、しおれた雰囲気にジェイドは戸惑って声をかけた。

「あ〜……ちょっと、いいですか?」

「良いですよ、入ってください」

ジェイドはトウガの肩に触れ、内へと促した。

肩を落とす、とはこういう状態を指すのだろうか。自分より小さいその体が、何だか更に小さく感じた。

「どうぞ」

ソファーに座らせ、カモミールティーを出す。
トウガは落ち着かない様子で、お茶を入れる一連の動作をただ見ていた。

「で、一体どうしたんです?貴方に元気が無いなんて、珍しくて雨が降りますよ」

常ならトウガからペラペラ喋り出すところだが、今回ばかりはジェイドから話を振る。

トウガは腕組みをして、ん〜と悩んだ様子を見せると、意を決して話し始めた。

「俺、消えるみたいです」
「………」

トウガの目が真っ直ぐジェイドを見つめ、言葉が、言葉の中身に息が、詰まった。

役目を終えればディセンダーは消える。
…そんなことは初めから知っていた。


「…知ってました」

「俺も。」

トウガは困った様に目を逸らし、お茶に口をつけた。

「知ってたんですけど、何ていうか…」

「辛い、ですか?」

トウガから一旦視線を外し、揺れるお茶に落とした。

「何ででしょーね?その為に出てきたのに」

参ったな、という風に頭をかく。声はしっかりとしている事が、逆に無理を感じさせた

「…人は長く生きれば弱くなります。知らなかったことを知る、怖い事を怖いと感じる、その経験が人を臆病にさせるんです。18年生きて、パニールは今、死に怯えているでしょう」

「18年…か。長いな」

淡々と語る、ジェイドの声はいつもより優しい。少し落ち着いたトウガはまた一口、お茶に口をつけた。

いい香りだと、ようやくそれがハーブティーだと気づいた。

「一年でも体を持って生きれば、消えてしまう事に恐れを感じても、不思議ではありませんよ。」

「一歳の子供でも?」

「赤子が寝付く前にぐずる原因は、それだそうですよ。意識が無くなる事に死を感じて、恐怖で泣くそうです」

.
「人の子とおんなじ、か。意外と俺、普通なんすね」

少し持ち直したトウガに、ジェイドが微笑む。

「それに貴方は死ぬ訳じゃない、体がマナに還るだけです」

「…俺のからだ…」

呟いて、自らのからだを確認する様に見回すトウガの手に、意地悪そうに笑ったジェイドが

指を絡ませた。

「どうですか?」

「…少し冷たい」

絡ませたまま持ち上げて、手の甲にキスをした。

「これは?」

「くすぐったい」

そのまま舌を這わせ、ちょっと舐めて指先に噛みつく。

「痛てっ」

唇を離し、ジェイドは悪戯っぽく笑った。

「後は?」

「…ドキドキします。」

「合格」

―…からだと、こころは繋がっていること―

「解れば、大丈夫」

ジェイドはトウガのからだを両腕で抱いた。
言葉と体温が、トウガを暖める。

「ジェイドさん…」

亜麻色の髪を片手で梳き、流されて唇を奪った。

「…ん…」

ジェイドは大人しく目を閉じた。
唇を甘噛みし、舌を差し入れ、絡ませる。

頭に電気が走った様な感覚がして、トウガは夢中で口内を貪っていた。

「…ふ……ぅ…」
時折、息を継ぐ甘い声がする。
その声が、更にトウガの理性を奪っていく。

「ジェイド…さん」

熱が、中心に集まっていくのが分かる。
首筋に噛みつくと、ジェイドの体がビクっと震えた。

「っ……トウガ」

潤んだ紅い瞳がトウガを見つめる。

「……ジェイドさんのからだも、見ていい?」

ジェイドのその白い体を見たいと思った。

「貴方も…脱ぐなら」

若干赤くなって、俯いて呟く。
ストレートな言い方をされると恥ずかしいらしい。
余裕の無いトウガは早速ジェイドの服のボタンにに手をかける

「あ」

思い出した様にジェイドがトウガの手からすり抜けた。

「…流石に人には見せられませんからね」

恥ずかしそうに笑うと、トウガが入ってきたままのドアに、鍵をかけた。



初めて見るジェイドのからだは、白くて綺麗だった。

細い首、きれいなラインを描く鎖骨、肉付きの薄い腹部と腰、まっすぐな足とー

目を逸らしたくなるくらい、情を誘う赤い突起。

あまり見られるので、恥ずかしそうに顔を背けられた隙に、そこを舐めた。

「あ…ッ」

刺激に身を捩らせ、恥ずかしさから更に頬を赤く染めた。
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