現代BASARA

□夢の花
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『……もし…生まれかわるなら…?』



『次に生まれんなら…』





傍に…。





桜が散るように消えた命を懐かしんだのは昔。



「政宗殿!!」
「政宗!!」

競うように声が被り、名を呼ばれるのに正直な所ややウンザリとしながら門を潜った。


「朝早くからうるせぇ…。」

ただでさえ苦手な朝なのに、テンションMAXの二人に出迎えられるのは正直頭の痛い所。
「おはようございまする。政宗殿、今日はまっこと天気の良い一日!折角授業も午前まででございまするに…是非某と!」
「お前部活は?」

赤のネクタイが映える夏休みの小学生のテンションな真田幸村は、少しだけ長めな後ろ髪を後ろで一つに束ねた髪をまるで動物の尻尾のようにパタパタとさせ駆け寄ってくる。

「そーそー、サッカー部のあんたエースなんだからサボんなよ。」
俺の首にガッチリと鍛えられた腕を回してカラカラと笑うのは、短髪の髪を立ち上がらせた銀髪の長曽我部元親。

この二人を始めにぞろぞろ集まる烏合の衆

「…だんなぁ…明日は試合なんですからね…」
「おっはー政宗。相変わらず美人だねぇ〜」
「……朝から騒ぐで無い。」

オカン気質な性格とは違い、見た目は軽薄そうに見える茶に近いオレンジ色の髪の人物と歩いて来るのは平均身長を優に越す人物。しかし、大きいのは身長だけでバランス良く筋肉の付いた肢体はモデルよりもスポーツ選手にみえる。
そして、俺の後ろから淡々とした口調で現れたのは、氷の像のような印象を持つ人物だ。

全員が全員異常な程に整った顔立ちをしている為に悪目立ちしてしまう。

「……ったく…なんで俺のトコに集まってくんだよ…。」

外見にはコンプレックスのある俺は深いため息を吐き、小さな声で呟いた。

最近、父親の仕事の関係で日本に戻って来ることになった俺に次々と取り巻くようにして、奴等は現れた。


ソイツラ曰く…

『前世』の記憶があるらしい。

それで、俺にもかまってくるらしいのだが…俺には記憶なんて無かった。
ただ時折、夢の中で誰かと桜を見ながら話しているのを見る時がある。


ただそれだけだ。


「……はぁ…朝から何でこうなんだ…。」
どちらかと言えば静かな方を好む俺は朝からの騒音に正直うんざりしていた。


父親の事業で海外に居たが、大分落ち着いたのと治安を考えて日本に戻る事にしたらしい。
確かに弟の小次郎は中学生になったばかりだ。
過保護な両親が心配なのも仕方無い訳で…。なら自分だけでも残ると言ってはみたが…大反対された。
子供の頃から右目の視力が異常に弱く片目だけ色素が薄く、光を嫌う目のことを心配してくれたのだと思うが、弟が言うにはソレだけでは無いらしい。


「なぁ、政宗〜帰りカラオケ行こう〜俺新曲覚えたんだよ。歌いたい〜!俺の美声を聞いてよ政宗〜!」

俺の肩に手を回していた元親の手を強引に払い、腰に腕を回して抱き寄せて来たのは前田慶次。
俺の頭一つ分以上でかい優男。
何故にコイツは人の腰を触るか…。
「……行かね〜。」
ペシリと音を発てて手を叩くが、嬉しそうにニコニコしたままだ。早く離してくんねーかな…じゃねーと、もうすぐ面倒な事になる。
「…ま…前田殿…そんなカラオケに誘うなど破廉恥ですぞっ!!!!まして、政宗殿の柳腰をその様に撫で回すなどは…はは破廉恥っ!!!!」
グラウンドいっぱいに響く幸村の『破廉恥』に朝練をしていた野球部や陸上部の連中からも注目を浴びる羽目になる。
「るせぇ!!!」
幸村の頭を一発殴り、その他の面々すらも置き去りで大股で教室へと突き進む。



教室に向かうまでの廊下でも、付きまとう為に悪目立ちして女生徒のひそひそとした笑いや男子生徒のあからさまに一歩退かれた視線に肩を落としたくなる。
なまじ奴等の顔が半端無く良い為に俺の存在は異質に見えるのだろう。

モデルのような身長と甘いルックス、更にはニコニコとした笑顔の慶次。
身長は俺と大して変わらないが、まるで犬のような人懐っこさに女子が好きそうなアイドルやジャニーズに居るような顔の幸村。
髪色が派手で、飄々とした口調から軽薄そうに見えるが幸村の面倒をよく見ている為に実は面倒見の良い猿飛も正直顔は整っている。
さっきから、黙ってついて来ては時折、幼なじみらしい元親に文句を言っている元就は、本当に整った顔立ちだ。
性格は少々冷たく、怖いと言うか恐ろしいらしいのだが、特に俺には害が無いのでいい。
そして、その元就に冷たくあしらわれる銀髪の元親は一見怖く見えるが、実に男らしい顔立ちで精悍な顔だ。
俺と同じように片目を医療用の眼帯で覆っているにも関わらず、ひどく美形だ。
何やら子供の頃には舞を習っていたらしく、豪快に見えて実は繊細な仕種もする。

そんなメンバーが毎日毎日、俺に構ってくるのだ。ひどく面倒臭い。
奴等に憧れる生徒からはやっかまれても仕方無い。
仕方無いんだが、その視線すらうっとおしい。
思わず右目を隠す前髪をクシャリと掴む。
「どうした政宗…具合でも悪ぃのか?」
覗き込んできたのは同じように隻眼の元親だった。
心配そうな瞳は同じ隻眼とは思えないくらいに優しい光があって、俺とは正反対の存在だ。
「…何でもねぇ大丈夫だ…。」

同じクラスの元親は、俺の手を取るとさっさと教室へと入ってゆく、こうなると他のクラスのメンバーは時間が無いと入って来づらいからだ。
後ろからはブーブー文句を言う慶次と幸村の声が聞こえて来たが、元親は無視してそのまま教室にの扉を開けた。
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