ヒトミぐるり

□『好き』
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ゆみこが、私のことを『好きだ』と言った。

私の目をしっかりと見つめ、低い、やわらかな声で。

言い終わると、小さく微笑み、深々と頭を下げた。



「ありえない…」

「え?」

トムが怪訝そうに私を見る。

「だから、ありえない」

「何がですか?」

「…ひとりごと」

「はあ」

立ち上がると、かさっと音がした。

「落ちましたよ、オサさん」

「ああ、これね」

紙袋の中身は、ゆみこが家に置いていったコート。

予期せぬ告白に、渡しそびれてしまっていた。

「これ、ゆみこに渡しといてくんない?」

「いいですけど…」

紙袋を受け取りながら、トムが私を見上げる。

「ゆみこさんと…、何かあったんですか?」
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