ヒトミぐるり
□chicos
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年が変わって、あの人は去った。
季節は移り、もうすぐ、ゆみことの初めての旅が始まる。
「お部屋は別ですよ」
「(わっ)いつからいたのっ?」
「ずっといましたよ」
黒い瞳をくるっと回すと、ひろみは傍らにおいてあったチョコレートの粒を、口に放り込んだ。
「さっすが。キムさんつながりの差し入れは美味しい♪ですね」
「何の用?」
「それに、お二人の旅行じゃなくて、公演ツアーですよ(お間違いなきよう)」
「わかってます(敬語)」
「チカさん」
「何…?」
「素敵ですよ」
…
あーっ。もうわかった。
私はひろみに背を向けると、台本やら書類やらをバッグに入れた。
「あの…、チカさん…」
「(くるっ)もうっ、いい加減に!!!」
え…?
きょとんとしたゆみこが、そこに立っていた。