ヒトミぐるり
□reserva
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「よく知ってるねぇ。こういうところ」
「『ひーたんリサーチ』は完璧ですから」
ひろみが招き入れたのは、劇場近くの、路地を入ったビルの、その奥にある、小さなスペイン・バルだった。
「毎年、この時期になると、お姉さんたちみたいな、きれいな人がいらっしゃるんで、うれしいんですよぉ」
まだ若い、仕事柄か、ちょっとスペイン人が入った風貌のオーナーが、グラスを磨きなが言う。
「…もう誰か来てるんだ」
ひろみが残念そうにつぶやく。
「さ、ひろみ、飲もっ♪」
「…はい」
どんなに陽気にふるまっても、この子には、すべてお見通しやねんやろな、たぶん…。