『瞳…』
□絆
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『カンパニー』
『組』から、そう呼びかえることにも、ずいぶん慣れたと思う。
明日はいよいよ千秋楽。
昨日なんか、イレイが「トウコさん、俺、さびしーっ(泣)」って抱きついてきた(おー、よしよし)。
人生の半分を過ごしたカンパニー(?)と違い、毎公演が、退団公演のようなもの。みんな、今を精一杯演じながら、視線は、その少し後を見始めている。
全員が、違うその先を。
きっと、あの人も…。
「なーに、メランコリックジゴロ(ジゴロは余計)になってんのよ?」
「あ〜。アイーダ、お疲れ〜」
「いよいよね〜」
「寂しい?」
「ううん。トウコさんとは、絶対また会えそうな気がするんだもん」
「せやな。…イレイは?」
「イレイ…?」
アイーダは口を尖らした。
「子供じゃん。あんなの」
「(あらまあ)ワタさんが…恋しい?」
「べっ、別にっ(赤面)」
…わかりやすいなあ…。
「ト、トウコさんこそっ」
「ん?」
「ワタルさんのこと、もう、好きじゃないんでしょ?」
「何やて?」
「だって、忘れてるじゃない。今日が何の日かって」
「今日?」
「うーわ。まじ忘れてる。ちょっと、外、見てみなさいよ」