『瞳…』

□鮮紅
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「ひとくち目で…、血のにおいが、ふわあって口のなかいっぱいにひろがるんですよぉ」

…血のにおい?

トナミは、うっとりと続ける。

「それから、獲物の肉が、ゆっくり、体のなかに落ちてゆくんです」

頭をうしろにそらし、細く白いのど元から両手の指をゆっくり胸元にすべらせる。

「獲物の命が、私の命と合わさって…。新しいチカラが生まれる…」

両手を胸にあて、トナミは恍惚の表情を浮かべた。

「ワタル…さ…ん…」



しばらくするとトナミは目を開き、ちょっと首をかしげるようにして、にっこりと笑った。その中から鮮紅色がのぞく。

「おいしそう…です…ね」

口元が光ったのは…牙?

「無理…。ありえない…」

「あら。ワタシ、子牛だって飲み込めますのよ♪」

…………!!!

瞬間、視界の全部が、赤く染まった。
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