『瞳…』
□結ぶ
2ページ/22ページ
…
「なぜ…か…」
グラスのふちに指を置くと、イシさんは記憶をたどるようにカウンター越しの夜景をみつめた。
…
…あれは…、いつだったか…。
…
「トウコと別れることにしたから」
稽古のあと、ユキさんが世間話をするように、さらっと言った。
「え?」
聞き返そうとした瞬間、
「ユキちゃーーーん♪」
その名前の主が、目をきらきらさせながら駆け寄って来た。
「なあ、もう、帰るんでしょ?一緒に帰れるん?」
「うん。帰ろうか…」
…
「トウコには、この公演が終わったら言うつもり」
私の横を通り過ぎるとき、ユキさんは小さくつぶやくように言った。