『瞳…』

□結ぶ
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「なぜ…か…」

グラスのふちに指を置くと、イシさんは記憶をたどるようにカウンター越しの夜景をみつめた。



…あれは…、いつだったか…。



「トウコと別れることにしたから」

稽古のあと、ユキさんが世間話をするように、さらっと言った。

「え?」

聞き返そうとした瞬間、

「ユキちゃーーーん♪」

その名前の主が、目をきらきらさせながら駆け寄って来た。

「なあ、もう、帰るんでしょ?一緒に帰れるん?」

「うん。帰ろうか…」



「トウコには、この公演が終わったら言うつもり」

私の横を通り過ぎるとき、ユキさんは小さくつぶやくように言った。
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