『瞳…』
□扉
3ページ/4ページ
私の腕の中でじっとしている華奢な背中を、あやすように、とん、とん、と叩く。
今の私にできるのは、それくらい。
卒業の日、自分も泣きながら、その横で、顔が溶ける位泣いているトウコを、「お願いします」、と私の方に押し出した、緑の袴姿のケロに、いやだとも言えず(いやだったのか…)、
私は時々こうやって、トウコと同じ時間を過ごしている。
ケロ、大変だったんだなあ…(苦笑)
「…ます…」
「ん?」
「コーヒー、冷めます…よ」
顔をあげたトウコは、鼻の両脇を赤くしたまま、でも、もう、笑顔になっていた。
…そうでも、ない…か。
…
おだやかな時間(とき)…
今は、
それ以上でも、
…それ以下でもなく、
いつか、その先に、次の扉が…
fin