『瞳…』

□扉
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私の腕の中でじっとしている華奢な背中を、あやすように、とん、とん、と叩く。

今の私にできるのは、それくらい。

卒業の日、自分も泣きながら、その横で、顔が溶ける位泣いているトウコを、「お願いします」、と私の方に押し出した、緑の袴姿のケロに、いやだとも言えず(いやだったのか…)、

私は時々こうやって、トウコと同じ時間を過ごしている。

ケロ、大変だったんだなあ…(苦笑)

「…ます…」
「ん?」
「コーヒー、冷めます…よ」

顔をあげたトウコは、鼻の両脇を赤くしたまま、でも、もう、笑顔になっていた。

…そうでも、ない…か。



おだやかな時間(とき)…

今は、

それ以上でも、
…それ以下でもなく、

いつか、その先に、次の扉が…

fin
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