『瞳…』

□ひとつだけ
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「行こうか…」
「…はい…」

助手席に乗り込んでゆくトウコを、二階の非常階段のところから、ぼんやりとながめる…。

「あー、行っちゃったねえ」
「サイトー先生…」
「上手くいくといいんだけど…」
「…え?」
「いや、俺の作品が…さ」

…ま、まさかっ。

「これ、仕掛けたの、先生ですか?」
「いや、俺は、アドバイスしただけで…。あっ、どこ行くの?」

「車、追っかけます!!」
「何でぇ?」
「トウコが危なすぎますっ!!」

「ケロちゃん!!!」

階段を駆け下りようとする私の手をつかむと、先生は叫んだ。

「トウコをいちばんよく知っているのは俺だ〜っ!!」
「センセー、何言ってるんですか!!」

「いや、だから…」



「わかって…ます…」

私は…何も知らなくて…
何も…できなく…て…



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