『瞳…』

□記憶
3ページ/8ページ

ユキさんはふふっと笑うと、楽屋着の前をちょっと開けて、左側の鎖骨の下を指でツツ…となぞった。

「トウコはねえ、この辺に…、蛇、飼ってんのよ」

「…蛇…、ですか?」

「そう。アマゾンあたりにいる、目が大きくて赤いやつ(そんなやつ、いるんですか?姐さん)」

「…」

「時々、チロチロって、あたりを伺うように覗いてるの。うーん。今思い出しても、ぞくってするわぁ」

「!!!!!」

瞬間、青白い、突き抜けるような怒りが私を通り抜けた。




「…それ…で…」

やっと出た声は、かすれていた。

「どうすれ…ば、いいんです…か…?」

「その、なんとかっていう大きい子にまかせとけば?(他組の下級生だったから名前覚えてません)」

「ユキ…さん」

「多分、トウコから、せまったんだろうし」

「そんな…」

「しかもトウコは、そのことを、全然覚えてない…」

「…あ…」

「図星?」

「あ、…いえ」

「あなた…」

「はい」

「いい男に…なったわねえ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ