『瞳…』
□記憶
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ユキさんはふふっと笑うと、楽屋着の前をちょっと開けて、左側の鎖骨の下を指でツツ…となぞった。
「トウコはねえ、この辺に…、蛇、飼ってんのよ」
「…蛇…、ですか?」
「そう。アマゾンあたりにいる、目が大きくて赤いやつ(そんなやつ、いるんですか?姐さん)」
「…」
「時々、チロチロって、あたりを伺うように覗いてるの。うーん。今思い出しても、ぞくってするわぁ」
「!!!!!」
瞬間、青白い、突き抜けるような怒りが私を通り抜けた。
…
…
「…それ…で…」
やっと出た声は、かすれていた。
「どうすれ…ば、いいんです…か…?」
「その、なんとかっていう大きい子にまかせとけば?(他組の下級生だったから名前覚えてません)」
「ユキ…さん」
「多分、トウコから、せまったんだろうし」
「そんな…」
「しかもトウコは、そのことを、全然覚えてない…」
「…あ…」
「図星?」
「あ、…いえ」
「あなた…」
「はい」
「いい男に…なったわねえ」