『瞳…』

□記憶
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トウコのことを『トウコ』(トウコちゃんではなく)と呼ぶ人は、同期をのぞくと、そう多くはない。

ユキさんは、ちょっと遠い目をした。

「ずいぶん昔のことだわ…」

思いがけない出来事で、公演が3日で打ち切りとなり、恐怖と不安でいっぱいになっていた時、一番近くにいたのが、この人で…。

…その時に、ね…。

と、恥ずかしそうに教えてくれたトウコ。



「あなたには、ずいぶん、恨まれていたようだけど…」

ユキさんは、その色っぽい口元を、ふっとゆるめた。

「今だから言うけど…。
…誘ってきたのはトウコの方よ」
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