『瞳…』
□ひとつだけ
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「ワタさんの…、家に…、呼ばれた…」
ロッカールームの隅で私を待っていたトウコが、独り言のように言う。
「お稽古の…あと」
「そう…」
「ケロ〜、どうしよう…」
トウコは不安そうに私を見上げた。
「…どうしよう…、って、もう、返事しちゃったんでしょ?」
「…いい…の…?」
「…何…が…?」
「その…アタシが…、ワタさん…と…」
喉の奥がひりひりしたが、私は、笑顔を作った。
「行ってみないとわからないでしょ?」
「そうだけ…ど…」
…
「なんか…ね…」
トウコは着ていたシャツのボタンをひとつはずした。
「この辺が…」
左側の鎖骨の下にふれる。
「ざわざわ…するの…」