『瞳…』
□結ぶ
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「思ったよりは…、早かったわね」
デッキチェアからゆっくり身体を起こすと、その人は言った。
「そうです…か」
「突っ立ってないで、こっちに来たら?(まあ、なかなかいい眺めだけど)」
「あ、はい(そうです。水着です)」
ここでは、チェアはみんな、窓の方を向けて並べてあり、都会の夜景と、通り過ぎる車のライトを楽しむことができる。
「…よくいらっしゃるんですか?」
「そうね。溺れたくなったとき…とか」
背後にあるプールに湛えられた水が、やわらかいライトに反射して天井にゆらゆらと映しだされ、なるほど、海の底に沈んでいるような錯覚を覚える。
「…何に…溺れて?」
ユキさんは、ふぅっと笑う。
「…トウコに」
……!!
「冗談よ(やあねえ)」
「あの…」
「イシちゃんに聞いたわ」
「じゃあ…」
「もう、ずいぶん会ってないわよ」
「でも…」
「なぜ、私を呼ぶのか…、ってことよね」