『瞳…』
□予感
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喧騒…、という言葉が、この街にはよく似合う。
荷造りを終え、私はホテルの窓から、ぼんやりと外をながめていた。
公演は成功裏に幕を閉じた。
日本にはない熱狂が、私たちに伝染し、舞台は多いに盛り上がった。
…お芝居は、まあ、あれだったけど…
特にトウコの出た場面といったら…。
それから、巨大チエだるまも(いや、あれはすごかった)。
やりとげた満足感と、
これまで感じたことのない、
不思議な喪失感…。
ぴんぽん♪
あ、トウコだ。
「買い物、行こっ。」
「え、でも、集合まで、あと2時間しか…。」
「充分!!」
私の手をひっぱると、ロビーを駆け抜け、タクシーに飛び乗る。
トウコが、流暢な言葉で行き先をつげると、タクシーは走り出した。
…運転…、怖いんですけど…。
今、ぶつかりそうになった気がしたんですけど。というより、今、バスに接触しませんでした?
「着いた♪」
…助かった…。