『瞳…』
□願い
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「ワタシたち自身…の…?」
「…はい」
安心したように私の肩にもたれているトウコさんの髪の毛を、梳くようにゆっくり撫でる。
「なあ…ミズ…」
「はい…」
さんざん泣いたので、目のふちはまだ少し赤いけど、その表情はずいぶんおだやかで、ほっとする。
「コムも…」
同じソファで、シルバとローズが丸くなって眠っている。
「もう…『そこ』に向かっているんやな?」
「コムさん…は…」
…
『ねえ、ミズ。私たちは、舞台の上だけじゃなくて、オフでもタカラジェンヌを演じているの。
…
卒業はその夢から醒めるとき。
…
ミズ、その時はそばにいて。見届けて…』
…
…
「…ミズ…?」
…
「そばにいて…。見届けるだけです」
…
「ワタシにも…出来るやろか?」
「できるか…って…、トウコさんは、ワタルさんの物語のヒロインじゃないですか」
「…ヒロイン?」
「演じ切ってください」
「ミズ…」
「私たちに見せてください」
「……」
「あ、すみません。余計なことを…」
…
「ミズは…、何を演じるん?」
「…コムさんを…見守る男・Bです」
「あははは(せめて、Aって言わんかい)」
トウコさんが、じゃれるようにきゅきゅっと身体を押し付けてくる。
…
トウコさん…。
コムさんは…、
もう、多分、私のことを見ていません。
その視線は物語の先に…。
私は…。
…
「ミズ…?」
…
…
…
「…すみません…」